ブロードブリッジ(追加パッチ)〜a secret interlude〜
――――そこは冬木市を支える大空洞 そこで共鳴するように、大聖杯であったものが哭いている。 半年前に破壊された杯。願いを叶える為だけに造られたその杯は、結局、何かを叶える前に破壊され、何の役目を果たすことなく、ただのガラクタとなり、朽果てた。 それが、今宵、息を吹き返す異形を見せている。 「ふむ、やはりのぅ」 「魔術師殿、これは?」 その異形を見やるは、異形な老人と異形の仮面。 似つかわしくもないが、異形、と喩えるしかない者達が集っている。 「なになに。この町の異常は詰まる所、ここが起源じゃてな」 「全ての根源ということですか」 「うむ。エミヤの子伜に破壊されて、もはやガラクタじゃがの。腐っても聖杯、溜めるべき力があれば起動しおる。上にある聖杯から漏れた分が流れてきてもオカシクはないのぅ」 そう口にする老人の声と共に、ウゾウゾと黒い陰が集まり出していた。これもまた、異形なる姿。 それらは、少ないながらも、その数は次第に無限に広がっていく。 「ホレホレ、集まってきよったぞ」 老人がカラカラと笑う。 陰は、願いを叶えよ、と吼えている。 しかし、その願いが何なのかこの陰達には明白であろうか。 それが、老人はおかしくて堪らなかった。まるで、昔日の己を見ているようだ。 「カカカ、願いを叶えて欲しいが、叶えて欲しい願いはなし。おかしいものじゃ」 生きたい、その一念で生き続けた。 しかし、何故生きたかったのか、と問われても老人にはわからないのだ。 「じゃが、役目も果さずに朽ちたものに何を求めるのかのぅ」 「ですな、魔術師殿。それに、あの杯はすでに壊れております。力を注いでも」 「そうじゃ。溢れ落ちるのみで、溜ることはない。杯が満たされることはない」 言い切る老人に、仮面はただ普通に疑問の声を上げた。 「で、あれば―――そのこともわかっておられるのであれば、我等が出張ることもないのでは?」 仮面の言い分は当然といえば当然である。 ここに数多と陰が集まろうと、その願いを成就する術はない。 ただ、集まり蠢くだけである。 「なぁに爺の戯言よ」 「―――もしも―――万が一があるとでもお考えか?」 ドクロの面が静かに語り、そしてダークにて瞬時に数匹の陰を滅ぼす。 その陰の化け物はすでに無限に増えていた。 「ふぇふぇ、聖杯戦争には、万が一でも億が一でもおこりえる因果があるからのぅ」 言いながら杖をふるい魔術を行使する。 すると、どこから現れたのか、巨大で淫猥な蟲が大聖杯の間で迅速に陰をむさぼり始めた。 その無限の陰を、老人が操る巨大蟲が蹂躙した時、無限の異形は初めて二つの異形を敵視したようである。 ウゾウゾと無限に増えながら二つの人影を囲みだす。 そして、二つの異形は静かにお互いに背を向けた。 「しかし、もうちぃとこの世界を楽しみたかったのぅ」 「ハハハ、しょうがありますまい。あなたが居ては、マトウサクラの体内に虫が残っていることになり」 仮面はその細長い腕を掲げた。 「お主が出て来れば、ランサーと佐々木小次郎は消えねばならぬしな」 老人はカラカラと笑いつづけた。 それにつられたのか、仮面もまた、笑むことのできぬそれで笑む。 「互い、嫌われてますな」 「よいよい、なんとも心地よいは。」 互いに笑う。繰り返される日々を終らせる役割を持ったものが退場しなければ出現できない異形たち。 「今宵はよろしいのか?干渉しても」 「まぁ、最後の最後ではあるが、監督官たるキレイの娘が率先して手を貸しておるからのぅ」 「なるほど、最後くらいは、と」 「最後くらいはよかろう。こういう矛盾も」 そして異形の二人組は、静かに、マスターとサーバントとして、人知れず、誰も知らぬ戦いを始めた。
by ゴーセ
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