「シロウ、吉○家へ牛丼を食べに行くので連れて行きなさい」 台所で昼食を何にしようかと冷蔵庫の中を覗き込みながら考えているとセイバーがそんなことを言って居間に入ってきた。あれれ？ちょっと待てよ、と一瞬思考を停止させる。今セイバーさんは何と言ったでしょうか。―――牛丼。しかも吉○家。大雑把な料理を嫌うセイバーがそんなことを言うなんて考えられない。 そこで、いつか起きた出来事を思い出した。遠坂に乗せられてセイバーのクセ毛を触ったときのこと。 確かあのときは・・・ 「・・・なんでさ」 恐る恐る居間へと視線を向けてみると、ゴスロリ衣装に身を包み、傍若無人に立ち尽くした、暗黒面丸出しの黒セイバーが立っていたのだった。 「どうした、シロウ。吉○家へ行く、早くしろ」 そっけなく用件だけ言って黒セイバーは踵を返して玄関へと歩いていく。 俺の思考は未だ現状へと追いついてこないので、動く事もできず、ただ呆然と黒セイバーの歩いていく姿を目で追うことしかできない。 「シロウ、シロウ」 小声で俺の名を呼ぶ声がする、声の主を探して部屋の中を見回してみると、テーブルの横――黒セイバーが立っていた位置とは真逆の位置――に隠れるように座っているイリヤを発見した。 「なにやってるんだ、イリヤ」 「いいから、ちょっとこっち来て」 イリヤに手招きされて、イリヤと同じようにテーブル横に座り込む。 「あのね、シロウ。セイバー黒セイバーに変わってたでしょ？私ね、その犯人知ってるよ」 「何っ、本当か！？」 「犯人はずばり凛よ」 衝撃の事実、犯人は赤い悪魔だった。 「なんで、また遠坂はセイバーのクセ毛なんて触ったんだろ。結果なんて目に見えてるのに」 「さあ？そこまでは私には分からないれど、私確かに見たわ。凛がセイバーのクセ毛を触ってセイバーが黒セイバーになるところを」 遠坂になんの意図があってセイバーを黒セイバーにしたのかは分からない。分からないが、このままにしておくと、何が起こるか分かったもんじゃない。黒セイバーの言う事に従ったほうが無難なのではないだろうか。 「ねぇシロウ？セイバーと吉○家って所に行くんでしょ？私も一緒に行くわ」 「ああ、セイバーと吉○家に行くんなら、他の皆の昼食が作れないから一緒に行こう。桜達は部屋にいたかな？」 「桜は今日は弓道の大会で朝からいないわよ、ライダーはアルバイトへ行っているし、凛はセイバーを黒セイバーにした後そのまま外へと逃げていったし、大河は桜達と一緒に弓道の大会に言ってるわ。セラリズには黙って来てるから居ないし、うん吉○家へ行くのは私とシロウと黒セイバーだけね」 いつの間にやら今日の衛宮邸には人がいなかったらしい。イリヤの発言の中にはおかしな事も含まれていたけど、今は気にせず、出かけることに専念しよう。後で双子メイドが強襲してきた時の事はそのときに考えればいいことだ。 「よし、セイバーを待たせてるのも悪いし、吉○家へ行こうか」 「うん、行こー、あはっ私牛丼って食べるの初めてだわ」 家の戸締りをして玄関へ。 「遅い。何をしていたのだシロウ、早く吉○家へと行くぞ」 黒セイバーとイリヤを連れて、吉○家のある新都へと向かったのだった。 「次は新都ー新都ー、お荷物のお忘れのなき―――――」 バスのアナウンスが新都への到着を知らせる。時刻は昼にさしかかり始めたということもあってか、新都には人が溢れ返っているのがバスの窓から見て取れた。 バスがバス亭へ止まった。ぷしゅーと音を立てながらドアが開き、俺達はバスから降りた。 イリヤは終始楽しそうに満面の笑みを浮かべている。一方の黒セイバーは終始無言で、一見しただけでは怒っているように見て取れる。 「えっと、確か吉○家はあっちにあったよな」 吉○家には年に数回しか行くか行かないかなので、吉○家のある場所もおぼろげなのだ。 記憶の中の道順を頼りにたどっていくと、見事そこに吉○家を発見することが出来た。 「へーここが吉○家かー。なんか店が小っちゃいね」 「ふむ、ここが吉野○家というのか、噂にたたぐわぬ良い雰囲気だ」 自動ドアを通って店内へと入る。さすが安いが売りの店だけに、お金の余裕がそれほどない学生やサラリーマンなどが店内の大半を占めていた。 店内を見回してみるとカウンター席はほぼ埋まっていて、３人が座れる場所は無さそうだ。テーブル席もほとんど開いていないように見える。 「申し訳ございません。現在どの席も満席状態でして、相席でもよろしいでしょうか」 座れる場所はないかと入り口で席を探していたら、店員がやってきて、そう告げた。 「えー。私は嫌よ、知らない人なんかと一緒にご飯なんて食べれないわ」 不満を訴えるイリヤ。 イリヤの言い分も十分理解できる、おれも出来ることならそうしたいところだ。 しかし――― 「構わない、席に案内しろ」 黒セイバーのその一言で見知らぬ人との食事が決定したのであった。 「ありがとうございます、それでは、席のほうこちらになります」 黒セイバーを筆頭におれ、不満は残っているが黒セイバーに何を言っても無駄そうなので一人むくれながらしぶしぶ 着いてくるイリヤの３人は店員に案内されてテーブル席へと歩いていった。 「それでは、ご注文がお決まりになりましたら、お申し付けください」 店員はそれだけ告げると、厨房へと消えていった。 「・・・・」 「・・・」 「―――」 「・・・・・」 相席の席へと連れて来られたおれは言葉を失って、相席になった相手を凝視していた。相手も同じ気持ちであったのだろう、驚きに満ちた顔でこちらを見ている。イリヤも驚きを隠せずに相手を見ていた。 黒セイバーだけが、変わらずどっしりと席に着いてメニューを確認していた。 「シロウ、早く注文を。私はすぐにでも牛丼が食べたい」 「ああ、ってちょっと待っててくれセイバー、今は大事な用があるんだ」 「待っているのは無理だ。ウェイター」 俺に注文をさせるのを早々にあきらめた黒セイバーは店員を呼んで注文をし始めていた。 その情景もあまり、意識の中には入って来ず、おれは相席になった相手に声をかけることにした。 「えっと、こんにちはバゼット、バゼットもここで昼食か？」 そう、なんと吉○家にて相席になったのはバゼットだったのだ。 「え、あ、いえ、はい。失礼、少しばかり混乱しているようです」 「あははっ、バゼットが混乱してる姿なんて早々見れないわよ、いいもの見せてもらっちゃった」 「・・っ。アインツベルン、その言い方は癪に障るので遠慮していただきたい」 「そう？失礼、以後気をつけるわ」 イリヤはわびれる様子もなく軽く受け流す。バゼットはそれにたいして深追いせず、一度深呼吸をして気分を落ち着けた。 「まあ、いいです。それより珍しいですね、貴方達がこのようなところで昼食を取るのは。・・・？何かセイバーの様子がいつもと違うように見受けられますが」 黒セイバーは無表情のまま牛丼が来るのをじっと待っている。その様子は普段の彼女には見れないとても不自然な状態といってもよかっただろう。俺やイリヤはセイバーが黒セイバーであると知っているので、疑問に思うことは無いが、やはりバゼットから見ると黒セイバーのその在り方にはひどく違和感を覚えるのだろう。 「ここで昼食を取ることにしたのはセイバーがここで食べたいって行ってきたからだ、セイバーの状態については、まあ色々あってって事しか説明できない」 「ふむ、セイバーの状態は気になりますが、あまり聞くのも詮索しているようで気分が悪いのでここで止めておきます、それよりも―――」 その時、バゼットの目が心なしか喜色に光った気がした。 「セイバー、あなたはここの食事についいてどう思いますか、私は頼んでから３、４分で出てくる素早や、安価であること、簡単に食事を取る事が出来ることを素晴らしいと思っているのですが」 急に何を言い始めたのだろうか、バゼットは吉○家の評価を黒セイバーに聞いているようだ。 「そうですね、バゼットの言うことは分かる。私もここの食事は好ましいと思う」 途端、目を輝かせるバゼット。その表情は少し分かりづらいが、喜んでいるように見えた。 「セイバー、貴方との価値観はここへ来て全てが合致したようです。今までは食事に関してたびたび衝突をしていましたが、これであなたとは心を分かち会うことが出来る」 テーブルを挟んでがっしと黒セイバーの手を握るバゼット。ああ、確かに普段のセイバーは大雑把な料理を嫌い、手抜きでないちゃんとした料理を好むからな。それに比べてバゼットは食事は摂取できれば何でもいい、もとい簡単にとれるのならば、簡単にとれるほど良いと考えているような節がある。その対極する考えが二人を衝突させ、時にはその場で戦闘が始まりそうなほどの威圧感につつまれたこともあった。 黒セイバーはバゼットよりの大雑把な食事を好むので、バゼットの言っていることもなんとなく分かる。 ああ、でも、それはいまの黒セイバーの状態の時だけであってセイバーに戻ったら、バゼットの今の認識は消去されてしまうのだ。 「ねーシロウ、私達は何食べるの？」 イリヤの問いで、我に返った。そういえば、まだ俺達は注文してないんだった。 「そうだな、俺は牛丼の並でいいかな。イリヤは何にするのか決まってるのか？」 「私も、シロウと同じのー」 「おっけ、すいませーん」 店員を呼んで注文を済ませる。 「おまたせしましたー」 俺が注文した店員と入れ違いに黒セイバーが頼んだ注文を届けに店員がやってきた。 「牛丼得盛ツユだく卵付きになります」 そういってテーブルに置かれた牛丼の数は４つ。あれ？不思議に思い黒セイバーを見てみる。 もぐもぐとすでに１つめの牛丼を食べ始めていた。 しかもその食べるペースは通常の３倍ほど、このペースでいくと１０分もあれば４杯全て食べきるのではないのか。 「あの、セイバーさん。それ全部食べるのでしょうか？」 知らず敬語になる俺、黒セイバーに聞くのが正直怖かった。 「無論だ。何か文句でもあるのか」 「いえ、ありません」 黒セイバーは普通に見てるのかもしれない、けど、俺には睨んでるようにしか見えなかった。 がくがくぶるぶると全身が震えてしまう。 「よしよし、怖くないよー」 イリヤに頭を撫でられてしまった。 うう、恥ずかしい。 もぎゅもぎゅと食べるペースを崩すことなく食べ続ける黒セイバー。 バゼットも自分の食事に戻っていた。 何とか気分を落ち着けて黒セイバーの食事風景を眺めてみる。口の中いっぱいに牛丼を頬張るその姿はハムスターに似てどこか微笑ましく感じた。すでに黒セイバーの牛丼は２杯目だった。 「牛丼並２杯お待たせしましたー」 そこへ、店員が俺とイリヤの分の牛丼を運んできた。 「わー、ねシロウ早く食べよ」 割り箸を割って嬉しそうに牛丼を食べ始めるイリヤ。 俺も割り箸を割って牛丼を食べ始めた。 「うん、思ってたよりおいいしわ」 一口目を飲みこんでからイリヤが人生初体験の牛丼の感想を述べる。その後はもきゅもきゅと一口ずつゆっくりと食べる。 バゼットはすでに牛丼を食べ終わっていた。今はお茶を一口飲んでほっとしている。 黒セイバーは３杯目にとりかかっていた。言うまでもなく食べるペース速すぎデス。 これがセイバーだったらもっと味わって食べるべきです、とか言うのだろうか。 そういえば、結局遠坂は何でセイバーを黒セイバーにしたんだろう。しかも黒セイバーにしたあとは放置して逃げたらしいし、ますますもって遠坂の考えが分からない。家に帰ったら聞いてみないとな。 「あーおいしかった。ごちそうさま」 茶碗の上に箸をおいて、両手を合わせてお辞儀をする。 俺も残りをささっと食べて、両手を合わす。 「ごちそうさま」 「そういえば、士郎君」 俺が食べ終えるまで待っていたのかタイミングよくバゼットが話しかけたきた。 「今朝早くサクラさんを新都の駅付近で見かけましたがどこかへ出かけたのですか？」 「ああ、桜は今日は学校の部活の試合らしい」 桜に悪い事をしてしまった。今日が弓道の試合だと知ってたら弁当でも作って試合を見に行けたかもしれない。今からだと試合も終わってしまうだおうし、何より今回の大会が何処で行われたのかを俺は知らなかったのだった。 「それで、朝早くから新都にいたのですね、納得しました。では、凛も部活だったのね」 「？いや、遠坂は部活はやってないぞ」 互いの意見にいぶかしむ俺とバゼット。 「そうなのですか、ふむ、なら凛は何故新都にいたのでしょうか？」 「凛は今朝はずっと家にいたわよ。貴方見間違えたのではなくって？」 イリヤが静かにバゼットに聞いた。 バゼットは右手をあごに置き、しばし考え込む。 「私もきちんと確認したわけでわないのでそうかもしれません」 「まあ、そんな所でしょうね」 肩をすくめてみせるイリヤ。バゼットはそうは言ったものの、今ひとつ釈然としない顔をしていた。 「シロウ。牛丼追加３で」 「まだ食べるのかよ！」 黒セイバーの食欲はいったい如何程なのか、牛丼４杯、しかも得盛を食べたのにもかかわらず未だ満足している様子ではなかった。 ―――結局黒セイバーはその後５杯の牛丼を黙々と食べたのだった。 「ありがとうございましたー」 吉○家を後にした俺達はどこかへ行く予定もないのでバス亭へと向かった。 バゼットも午後は何も用事がないそうなので一緒に衛宮低へと行く事になった。 「あら、衛宮の坊やじゃない」 ふいに、声を掛けられた。 俺のことを衛宮の坊やと呼ぶのは一人しか思いつかないが、それでも確認のために相手の顔をちゃんと確かめた。 手提げバックを片手に下た、柳洞寺の若奥様、葛木キャス子さん、もといキャスターがそこに立っていた。 「ああ、キャスターか。キャスターは何時もどおり買い物に来てるのか」 「ええそうよ。今晩こそは宗一郎様に心底おいしいって言ってもらえるようなおいしいご飯を作ってみせるわ」 なにやら、熱い闘志の心燃やすキャスター。バゼットはあまりキャスターと面識はないようで、少し警戒した様子で俺達のやりとりを見ている。 現実に戻ってきたキャスターが、俺達４人の中の１人を見て動きを止めた。 「あらあらあら、も、もしかして、そこにいるのはセイバーではなくって？？」 特徴的な三角耳をぴこぴこ上下に動かしながら黒セイバーを見つめている。 「そのゴスロリな格好は衛宮の坊やが着せたの？」 一転目線を俺に向けて、真剣に聞いてくる。 「え、いや・・・」 何と答えるべきか考えてしまう。キャスターの目は真剣で下手に答えたらＢＡＤＥＮＤへ突入しそうなほどなのだ。 どう答えようか考えていると、キャスターの表情がふいに穏和になる。 「よくやったは衛宮の坊や。はぁーいいわ、やっぱりセイバーには可愛い服が似合ってるわ。ねえセイバー、私と一緒に柳洞寺へ行かない？可愛い服がいっぱいあるわよ」 「断る」 「えええー」 黒セイバーの即断に本気で落ち込むキャスター。何か見ているとどんどん哀れに思えてきてしまう。 「衛宮の坊や」 「はいっ！？」 地面へと崩れ落ちてよよよ、と泣き崩れていたキャスターは急に立ち上がって、俺の両肩に手を置いた。 「またセイバーに今日みたいな可愛い服を着せたら真っ先に柳洞寺に来なさいね」 「え、でもあれ着せたのおれじゃ・・・」 「いいわね」 「はい」 目が血走ってます。怖いです。今日の俺って立場弱くないか。皆怖いんですが。 イリヤもバゼットも俺とキャスターのやりとりをただ見るだけで何も言わないし、黒セイバーにいたっては興味なさそうに見てらっしゃる。 「それじゃあ、私はもう行くは、材料を買わないと。またねセイバー今度可愛い服持って衛宮の家に行くわねー。そのときには衛宮の坊やもセイバーに可愛い服着させてね」 最後までテンション高めにキャスターはこの場を離れていったのだった。 「だから、セイバーの格好は俺が着せたんじゃないってのに・・・」 すでにキャスターの姿は人ごみに紛れて消えた後だった。 その後は何事もなくバスにのって衛宮邸へと帰ってくる。 「ただいまー」 「おかえりなさい―――ってどうしたのよ士郎。帰ってきたら誰もいないからびっくりしたじゃない」 予期せぬ人物が俺達の帰りを出迎えた。 「と、遠坂、お前何処行ってたんだよ。遠坂のせいで俺達大変だったんだぞ」 「何？何の話をしてるの―――」 言葉の途中で止まる遠坂。視線は俺の後ろ、黒セイバーに止まったまま固まっていた。 「ちょっと、士郎。こっちきて」 廊下の角まで曲がってから、俺を呼び寄せる。 ３人を玄関に残して俺は遠坂のところへ向かう。 「どうした遠坂？」 「どうした？じゃないわよ、何でセイバー黒化してんのよ」 怒りに任せてつっかかってくる遠坂。 待て。今遠坂は何て言った？ ナンデセイバークロカシテンノヨ。いや、それは俺が聞きたかった事だ。なのにその答えを遠坂は俺に求めてきた。何やら頭が混乱してきそうになりながら、冷静に今の状況を整理して、遠坂に質問してみる。 「何でって。それは遠坂がセイバーを黒化させたんじゃないのかよ」 「バカ士郎。どうして私がわざわざ自分を死地に向かわせるような事するのよ」 「いや、最後にドジを踏む遠坂の特技が炸裂して、みたいな何かがあったとか」 どんっとオデコに鈍い痛みが染み渡る。 「いったぁ」 「衛宮君。私がそんなことするように見える？」 笑いながら聞いてくるが、目は笑っていたが、口が笑っていない。しかも右手が淡く光っているではありませんか。 さっきの鈍い痛みはどうやら遠坂に軽いガントを打たれた痛みらしい。 「見えないです」 「あったりまえでしょー！冗談じゃないわよ。そもそもどうして士郎は私がセイバーを黒化させたと思ったのよ」 「あ、そうだよ。イリヤが遠坂がセイバーを黒セイバーにした場面を見たって言ってたから、遠坂がやったって思ったんだ」 「なんですって！あのロリブルマー。何デタラメ言ってんのよ、ちょっとイリヤー！」 石造が動いかのように大きな地響きを起こしながらずんずんと廊下を歩いて玄関へと戻っていく遠坂。 俺も急いで遠坂の後を追った。 「あら、リン。どうしたの何かあった？」 玄関ではイリヤが何処か楽しそうに笑いながら遠坂に質問していた。 「あんた。私がセイバーを黒化させたって士郎に言ったみたいね。どういうことよ」 「ああ、そんな事。確かに言ったわ、それがどうかして？」 「大有りよ！私はそんなことしてないないわよ、どういうことか説明しなさい」 「まあいいわ。教えてあげる、でもその前に居間へ行きましょう、いつまでも玄関だと客人に失礼よ」 そう言われて遠坂はやっとバゼットの存在に気付いたようだ。 一旦怒るのを止めて、遠坂はバゼットへと向き直る。 「ごめんなさいバゼット。貴方が着ていることに気付いてなかったわ。どうぞ上がって」 「いえ、問題ありません。気にしないでください。お邪魔します」 そうして全員で居間まで場所を移動した。 お茶と茶菓子をトレーに載せて、テーブルへ移動する。 全員にお茶と茶菓子を渡して、俺もその場に腰を下ろす。遠坂は釈然としない感じでイリヤのことをジト目で睨んでいるが、睨まれているイリヤは気にした様子もなく、お茶菓子を食べている。 「それで、イリヤ。セイバーの黒化について聞かせてもおうじゃない」 黒セイバーは自分が話題になっているにもかかわらず遠坂とイリヤの話に興味をもっていない。 イリヤは茶菓子を食べ終えると、姿勢を正してきっと遠坂を睨みつけた。 その目にはどこか恨めしさがにじみ出ているようだった。 「確かに、結論からすれば私がセイバーのクセ毛を触って黒セイバーにしたわ」 イリヤの告白に驚きをかくせなかった。まさかイリヤがセイバーを黒セイバーにした犯人だったとは、一ミリも疑っていなかった俺は、ここにいる中で一番驚いていただろう。 バゼットは一体俺達が何の話をしているのかいまいち把握できていないようで、客観的立場として俺達を見ていた。 「確かに私がやったは、でも―――」 一旦そこで言葉を止めてから、イリヤはびしっと人差し指を遠坂へと向けた。 「その原因を作ったのはあなたよ、リン」 「・・・私？」 はて、なんのことやら、と記憶を遡って何か自分に原因があっただろうかと、考え始める遠坂。 「シロウ。どら焼きのおかわりを所望します」 まだ手をつけていない俺の茶菓子をじっと見つめながら黒セイバーが訪ねてくる。 半ばあきれながら無言で黒セイバーの前へ茶菓子を置く。 黒セイバーは、某ドーナツ店のマスコットキャラよろしく、もきゅもきゅと口の中いっぱいにどら焼きを頬張って食べ始める。 「うん。私が原因になることなんて何もないわ」 記憶を遡っても何も原因になるようなことに心当たりがなかったらしく、遠坂は考え込むのを止めてイリヤに向き直った。 途端、イリヤの表情にはあからさまな嫌悪感に顔をゆがめた。 「ひどいわっリン！あなた３日前の話をもう忘れたって言うの」 ３日前。３日前に遠坂はイリヤを怒らせる何かをしたのか。駄目だ、俺には心当たりは浮かんでこない。 遠坂も３日前と言われて、３日前に何があったか考えるが、何も答えは出てこなかったらしい。 「わからないわ、３日前に私が何かしたの？」 「まだ、思い出せないのね。いいわ、なら今から３日前に何があったのか話してあげる。聞いてから謝ったって許してあげないんだから！」 イリヤは怒りながらも、３日前に何が起こったのか話し始めた。 ３日前の夕方。 士郎とセイバーは夕飯の食材を買いに行っていて衛宮低にはいない。衛宮低にいるのは、凛、桜、イリヤ、大河、ライダーの５人である。 テーブルの周りに座ってテレビを見ながらぼーっと過ごしている。 「そういえば、セイバーに弱点があるのって知ってた？」 ぽつ、と何気なく言う凛。 一瞬、凛が何を言ったのか分からずに考えこむ４人。 「弱点ですか？セイバーさんに弱点ってなさそうですけど」 「へーセイバーちゃんに弱点かー。ふむ、にゃんか楽しそうねー。ねね、遠坂さん。セイバーちゃんの弱点ってなんなの？」 大河は興味津々といったふうに目を輝かせながら凛に聞いてくる。 「セイバーの弱点。知ってると後々何か役に立ちそうね。私も知りたいわ」 何か企むかのように唇をうっすらと吊り上げながら、こちらも凛の話にくいついてきた。 ライダーはあまり興味はなさそうにお茶をすすっていたが、聞き耳を立てているので、全く興味がないわけでは無いようだ。 「いい。この話はセイバーに話しちゃだめよ。言ったら最後。暴君を呼び出すことになるから、そこのところ注意しといてね」 注意事項を述べて、さっそく本題に入ることにする。 ―――曰く、竜種には逆鱗がある。セイバーには竜種の因子も組み込まれている。ならばセイバーには逆鱗があるのだろうか、と士郎と話したのが事の始まりであった。 士郎にあれやこれや、と吹き込んで何とかセイバーの逆鱗を探させようと模索し、ついに私達はセイバーの逆鱗を探し出したのだ。途端庭まで吹き飛ばされちゃったけど――― 「―――って事があって、セイバーの逆鱗、もとい弱点が分かったのよ」 人差し指を立てて得意そうに話す。 ４人は諸々の感想を持って凛の話を聞き終えた。 「それで結局セイバーの弱点って何処だったの？」 イリヤの疑問に他の３人が答えを聞きたそうに凛を見つめる。 「セイバーの弱点ね・・・あー」 途端に気まずそうに明後日の方向を見始める。 「あれね、触ると恐ろしい事が起きて大変だったのよ、だから教えたくない」 あははー、と乾いた笑みを浮かべて目線が自然と下を向いていく。 「ひどい！教えてくれてもいいじゃない、遠坂さんのけちんぼー」 両手両足をじたばたとばたつかせて、大河は納得いかないと不満を口にした。 ライダーは何も言ってこないが、その目はじっと何かを訴えかけるかのように見てくる。 「いや、でも本当に大変だったのよ。士郎なんてずっと料理つくらされてたし、私だって―――」 「姉さん。先輩にまで被害を及ぼしたんですか？」 静かに、それでも部屋の中に透き通るように桜の声が通る。その声はぞっとするほど、冷たかった。 「あれれ？何か桜ちゃんの様子がいつもとちがうような、それに背中から黒い煙みたいな――」 「黒化はだめーーー」 凛はあわてて桜に飛びつく。 ライダーもイリヤもこれには驚いたらしくあわてて止めに入る。 「あれ、今私どうかしましたか？」 「いやなんでもないわ」 桜の周りに漂っていた不穏な空気が拡散していく。 「ただいまー」 玄関が開く音と、士郎の声が聞こえてきた。 「やば、士郎とセイバーもう帰ってきちゃった。この話はここでおしまいね、いい、セイバーから直接聞こうとするのも禁止よ」 凛は最後にそれだけいってその話を終わりにした。 「でね、私どうしてもセイバーのゲキリンっていうのが何処にあるのか知りたくって、今朝セイバーの体中触ってたら黒セイバーになっちゃったのよ」 なんて、しれっと答えるイリヤに俺はどう答えればいいのだろうか。 遠坂はイリヤの話に記憶しているところがあるのか、納得したように何度か頷いた。 「確かに、その話したわ。でも、だからって、それでセイバーを黒セイバーにしたのを私のせいにしないでほしいんですけど」 ジト目でイリヤを睨む遠坂。 遠坂の圧力に押されてか、じりじりと少しずつ後ずさっていく。 「ううー。お兄ちゃん助けてー」 威圧感に耐え切れなくなってか、後ずさるのをやめてまっすぐこちらへ突っ込んでくるイリヤ。 「え」 まさか、飛び込んでくるとは思っていなかったので受け止めきれず、そのまま倒れた。 「士郎。そのままイリヤ押さえときなさい」 「お兄ちゃん助けてー」 じりじりと、一歩一歩近づいてくる遠坂。 俺の腕の中でぶるぶると震えて助けを求めるイリヤ。 客観的にみたら、あきらかに遠坂が悪者に見えてしまう。 イリヤが悪いってことは分かっているんだが、何だかこのまま見ているのも釈然としないものを感じた。 「なあ、遠坂。確かにイリヤも悪かったかもしれないけどさ、そもそもセイバーの弱点の話をしたお前にも悪いところがあると思わないのか？」 「うっ。痛いとこついてくるわね」 「そうだそうだー、リンが悪いんだから私が怒られるいわれなんてないわよ」 俺の腕の中で、遠坂へと野次を飛ばすイリヤ。 その言葉に悔しそうに、体を震わす遠坂。 ああ、さっきまでの力関係がわずか数分で逆転してしまった。 「こら、イリヤも悪いんだから、遠坂に文句を言える立場じゃないんだぞ」 「うー、まあしょうがないわね。ごめんなさい、確かに今回の件は私も悪かったわ」 あまり悪いと思ってるようには見えなかったが、取り敢えず謝ったことは評価しよう。 俺は自然に、そっとイリヤの頭を撫でていた。 「あ・・・。えへへー」 最初は何が起こったのかと、驚いていたが、次第に満面の笑みに変わっていった。 「ふーんだ。いいわよ、私も今回はそういうことにとくわよ。ここでさらに何か言ったら、それこそ私が悪役になっちゃうじゃないの」 そっぽを向いて文句をたれながらも、イリヤのことはしぶしぶ許してくれるみたいだ。 よかった、これでひとまず丸く収まりそうだ。 「シロウ」 そこへ、黒セイバーの呼ぶ声がした。 何だろう、と振り返るとすぐ目の前に黒セイバーが立っていた。 「うおっ。ど、どうしたんだセイバー」 「そこに座りなさい」 「？ああ」 よく分からなかったが、言われた通りその場に腰を下ろした。 そこえ――― 「ああぁぁーーー」 「なっ！？」 「ほう」 「え、え？」 イリヤの叫び声が聞こえたときには、まだ何が起きたのか理解できなかった。 遠坂の驚愕の表情を見たときには、心地よい重みを体に感じた。 バゼットが関心したように頷いたときには、視線を下へと持っていった。 そして、俺は混乱した。 「ちょっと何やってるのよセイバー。そこは私専用よ」 「イリヤも何いってるのよ。いや、そんなことよりセイバーがあんな事してる姿なんて一生見ることないんじゃないかしら」 「見ていて微笑ましいですね、士郎君」 三者三様の意見を聞き流しながら、俺は深呼吸を繰り返しながら、何が起きたのか理解する。 つまり、黒セイバーが胡坐をかいて座った俺の上に座ってきたのだ。 黒セイバーの表情はいまだ、何の感情もしめしていない。 「どうしたんだよ、セイバー？」 頬が赤くなっていくのを感じる。こんなに近くにセイバーがいるのは嬉しいけど、恥ずかしいのだ。 イリヤが黒セイバーをどかそうと腕を引っ張るが、びくともしない。 「イリヤ。シロウは私の物だ。許可なく座らないでいただきたい」 「なんですってー。シロウはセイバーの物じゃないわよ。私の物よー」 どっちもとんでもない事を言っているが、俺はどうすればいいんだ。 口論を交わしているイリヤと黒セイバーをよそに、遠坂に助けを求めて見つめるものの、遠坂は面白いものが見れたと満足そうに見ているだけで、助けてくれる様子は無かった。バゼットに助けを求めるも、乾いた笑い声をもらしながら視線をそらされてしまった。 「いいからどきなさい。うーこうなったら、セラ、リズ」 「はい」 「うん」 イリヤが指をぱちんっと鳴らして呼ぶと、どこからともなくセラリズが現れた。 今まで何処にもいなかったのに、何処から現れたのだろうか。 「衛宮様。今日の昼食のことに関しまして、後でたっぷりと言い訳を聞かせていただきますが、今はイリヤ様が望んでおられるので、あなたを助けてあげます」 「ね、イリヤ。シロウの膝の上に座るのって気持ちいいの？」 く、恐るべしアインツベルン最強メイド。セラの棘のある言葉で嫌な汗が出て、リズの興味津々な言葉で頬が赤くなっていく。精神面を多感に傷つけられてしまった。 「さあセイバー。これであなたもお仕舞いよ、いっけー」 イリヤの号令により、左右から俺と黒セイバーを挟み込むようにじりじりと寄ってくる双子メイド。 セラは表情の裏に楽しさがにじみ出ていて、きっと黒セイバーを取り押さえるのではなく俺に何か仕掛けてくるのでは無いかと疑ってしまう。リズは何を考えているのか、楽しそうとも、嫌そうともつかない普通の表情で寄ってくる。 「うるさい」 一体なにが起きたのか。黒セイバーが一言発した、その後にはセラリズがひっくり返っって倒れていた。 一同は驚愕を隠せずにいる。 「邪魔をするのなら相手になろう。次は誰だ。かかってこい」 不適な笑みをたたえて、挑発する黒セイバー。 「むー。分が悪いわねどうしようかしら」 黒セイバーをどうやって、どかそうかと我策し始めるイリヤ。セラリズはいつの間にやら起き上がってイリヤの後ろで黙って立っていた。 「たっだいまー」 そこへ、軽快な声が聞こえてきた。 あの声は、暴食虎な英語教師、冬木の虎と恐れられる我らが藤ねえその人なのではなかったか。 「今日っのご飯は、なーにかな〜」 鼻歌交じりに居間へと向かってきている。 今のこの状況をどう説明すればいいのか、何も思いつかず、パニくる頭をよそに、藤ねえはどんどん居間へと近づいてくる。 セラリズはいつの間にか消え、イリヤは何事もなかったように座っている。 バゼットは客人らしく、お茶をすすりながら我関せずとアピールしている。 遠坂は楽しそうに含み笑いをしてお茶菓子を食べながら、藤ねえが来るのを待っていた。 今の状況で唯一異変があるのは俺、もとい俺の上に座っている黒セイバーただ１人。 「士郎、今日の晩御飯は何かな〜？」 ついに、居間へと藤ねえはやってきた。 「あれ？あれれ、セイバーちゃん可愛い格好してるわねー。あ、それにバゼットさん来てたのねーこんにちわ」 「お邪魔しています大河」 「でね士郎。何でセイバーちゃんは士郎の上に座ってるのよー！！」 叫ぶ藤ねえ。手をばたつかせながら、俺を睨んでいる。 何も答えることのできない俺は、ただ視線をそらして黙秘権を発動させることでしか対抗できない。 しかし――― 「先輩？何やっているんですか」 その声に反射的に視線を向けてしまった。 声の主は桜だった。 そこで思い出す。イリヤが今日は弓道の大会で桜と藤ねえが出かけていたという事を。藤ねえが帰ってきたのなら桜も帰ってきているのは必然。 俺の背中に嫌な汗が流れるのを感じた。 「ずるいです。いつもいつも私は我慢してるのに、そんなふうにあからさまに見せ付けられちゃうと、悔しいじゃないですか」 頭を下げ、ぽつぽつと語り始める桜の表情はうかがい知れない、が、しかし。桜の背中からだんだんと影がにじみ出てきているのは俺の目の錯覚か幻か。 「桜ちゃん？」 桜のどことなく不穏な様子に気付いたのか、藤ねえが桜の肩に手を置いて呼びかける。 だが、藤ねえの言葉は聞こえていないようで、下を向いたまま、ぶつぶつと何か言っている。 「私だって、私だって先輩に甘えたいです」 爆ぜる心音。桜の影はどんどん膨張していって、すっと消えた。 桜が顔を上げる。桜の目に光りが見て取れない。妖しい笑みを湛えた桜のその姿はまさしく黒桜だったのだ。 部屋の空気がどんどん下がっていく。今の状況でへたに桜を刺激するとどうなるかわかったもんじゃない。 「セイバーさん。そこをどいてください」 告げる声は心底冷たく感じた。 遠坂もイリヤも何も言えず、ただ桜の動向を見守っているだけだ。 バゼットは関心したように桜を見ている。いつもの穏和な桜しかしらないバゼットには黒桜に驚いているようにも見えた。藤ねえは乾いた笑い声を上げながら明後日の方を向いていた。 「断る。私が退かねばならない理由がない」 きっぱり断る黒セイバーは黒桜を一掃する。 一瞬たじろいだ桜だったが、黒セイバーの説得を諦めたのか、標的を俺に変えてきた。 「先輩。セイバーさんをどかしてください」 「いや、俺も出来ればそうしたいんだけど、出来ないっていうか、自分に正直でありたいというか・・・」 そうなのだ。黒セイバーが俺の上に座っているのは嬉しくは思っても嫌だと思うことは何があってもありえない。 だから、桜にどかせといわれたからといって、その通りにするのは躊躇われた。 「〜〜〜っ。先輩の、先輩のバカーー！！」 どんっと、部屋全体が一瞬揺れた。 黒桜暴走。 部屋はめちゃくちゃに。慌てふためく藤ねえは第２の破壊者へと君臨。藤ねえが動くたびに何かの壊れる音がした。イリヤはイリヤで楽しそうに笑いながら桜に加担。バゼットはこの惨事の中でも平然とお茶をすすっている。遠坂は笑い転げていた。 黒桜に対抗してか、黒セイバーは一向に俺から離れることはなく、黒桜が何かしら攻撃をしかけるも華麗に避ける黒セイバーに対し、被害を受ける俺という図式が展開されていった。 桜が落ち着きを取り戻したのはそれから１時間後のことであった。 昨日は大変だった。夕食を食べ終え満足した黒セイバーはセイバーに戻ったので一軒落着。もちろん夕食は黒セイバーだけハンバーガー、しかも２０個という大量の数を食べたのだが。 まあ、たまにはあんな一日があっても良い刺激になっていいだろう、と結論をつけておくことにした。 朝食の用意をするために居間へと向かう。 居間には藤ねえがすでにいた。 「おはよう藤ねえ。珍しいねこんなに早くにいるなんて」 藤ねえは、居間へ入ってきた俺を一度見たがその後に視線を下へと向けてしまった。 「？どうしたのさ藤ねえ。何か悪い物でも食べたのか」 「違うわよ。ねー士郎。怒らないで聞いてくれる？」 「・・・何かしたのか」 藤ねえの態度で何となくだが、悪い予感がする。 何かやらかしたのか。いつもの暴れまくりの冬木の虎は何処へ行ったのか、今日の藤ねえはえらくおとなしい。 「実はね―――」 藤ねえが、何があったのか話し始めようとしたその時。 「おはようございますシロウ」 背後で声がした。 びっくと肩を跳ねさせる藤ねえ。 その態度に何かしこりを感じたが、それはひとまず置いといて振り返る。 「おはようセイバー―――」 声の主はセイバーだった。それは声を聞いた時にはすでに分かっていたことだ。 それでもセイバーの姿を確認して我が目を疑った。 「―――なんでさ」 すぐに、あることに気がつき振りかえって藤ねえを見つめる。 「あははー、ごめんね士郎。私セイバーちゃんの弱点触っちゃったみたいなのよ。じゃあ後はよろしく！」 開き直ったように一気にまくしたてた藤ねえは、それだけ行ってとっとと居間を後に逃げ出していった。 あとに残されたのは俺と――― 「シロウ、今日はマッ○のテリヤキバーガーを所望します。マッ○へと連れて行きなさい」 昨日の再現のようにゴスロリ衣装に身を包む、黒セイバーがそこにいるのだった。

by 春の月

人生初の完結すことのできたＳＳです。
ホロウにて黒セイバー大好きっ子になり、今回の人気投票にてその思いをどうにか形にしようと、考え出来たのがこのＳＳです。
格キャラの言葉遣いや、話の流れがおかしかったりするかもしれませんが、楽しんで書くことが出来ました。
楽しんで読んでいただければ幸いです。

<<PREV<< >>NEXT>>

一つ戻る
一覧へ戻る