俺さ、イリヤに告白しようと思うんだ(by士郎)
「相談があるんだ」 三人の視線が集まる中、俺は開口一番頭を下げた。 「めんどくせー」 「あなたは少し黙ってなさい!!」 バゼットの鉄拳が突き刺さる。アヴェンジャーは高速回転しながらどこかへ跳んでいった。 「それで、どうして私たちに相談を? あなたならもっと適任な方がいるでしょう」 「いや、三人は一応新キャラだから」 そう言うと、バゼットは呆れた表情を浮かべて、カレンは「ペッ」と唾を吐いた。 「この早漏」 「まだなにも言ってないだろ!? というかなんでおまえが知っている!? いや早漏なんかじゃない!!」 「言い訳は結構です。それよりも早く内容を。私とバゼットの口調が同じだから分かりにくいのです」 「いや、俺に言われても」 「そこをどうにかしなさい。神の試練です。そんなことも分からないのですか、この愚鈍は」 「カレン、なんか血が出てるぞ? 至る所から」 「生理です」 「そんなわけないでしょう!!」 再び唸る鉄拳。カレンは素早く避けたかと思うと、小ばかにしたように「ふっ」と笑った。 プルプルと震える男装の麗人をなだめて、俺は言った。 「いいから、喧嘩はやめろ。俺の相談ができないじゃないか」 「・・・・分かりました。すみません、カレン」 「いいえ。私の方こそ。では、相談事の話に移りましょうか。彷徨える子羊に希望を与え、どん底に突き落とすのが私の使命なのですから」 今度は綺麗に拳が突き刺さった。 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>> バゼットの隠れ家だった洋館に俺たちは居た。一つのテーブルを囲むように並んでいる。 みんなが落ち着いたようなので、俺は真剣に切り出した。 「イリヤに告白しようと思う」 ぶほっ、とバゼットが飲んでいた紅茶を噴き出し、カレンはなんだか寒気の立つ笑いを浮かべた。 「ははは、ヤるのか? ヤっちまうのか? ひひひ」 「・・・・」 「ぬわあっ!! ギブギブっ、股間は勘弁ってにぎゃああああああっ!?」 硬い革靴の電気ハンマーに問答する刺青男を無視しつつ、カレンは真剣な表情で俺に向き直った。 珍しいこともあるもんだ。ちゃんと相談に乗ってくれるらしい。 「このぺド野郎」 「っていきなりそれかあぁあぁあぁあぁあ!!」 もの凄く真面目な顔で言われたから効果は抜群だ。マジでその目はヤメてください。泣きそうだから。 「分かってるんですか? 相手はまだ○4歳くらいの少女なんですよ?」 「伏字の部分が気になるんだけど分かっている。俺だって真剣に考えたんだ。登場人物は全て18歳以上だから全然OKだ」 「あの外見でそんなこと言われても信じられませんよね、普通は」 もっともな意見に頷く二人。アヴェンジャーも真面目に考える気になったらしい。股間を押さえて涙目になりながらも健気に頑張っている。さすがはこの世全ての悪と言われるだけある。 「恋愛に年の差なんて関係ない」 「寝言は寝てから言いなさい。そんな犯罪まがいのこと、神が許さなくても私は許します」 「許すのかよ!?」 「それから警察にチクります」 「もっと酷いよ!!」 「・・・・士郎、キャラがどんどん離れていっています。自粛してください」 俺とカレンに割り込んできてバゼットが言った。 ああ、そうだな。なんだかカレンと話していると調子が狂う。横を見ると、アヴェンジャーも同意するように頷いていた。 「真面目に考えてくれ。俺は本気なんだ」 「本気と書いてぺドと読むんですね」 「それは違う・・・・のか?」 自分でも自信がないから否定できない。 「ってーかよ、てめぇがそんなハンパだから駄目なんだよ。男ならロリでもショタでも胸を張りやがれ」 「俺はショタじゃない」 「そうか? オレはどっちもいけるクチだぜ? なあ、バゼット」 「私にふらないでください。なんですか? 私が同性からモテそうだとでも言いたいんですか! あなたたちは!! ええそうですよ、何がお姉さまだ。なにが同性のよしみだ!!」 どうやら触れてはいけない傷に触れてしまったらしい。半狂乱の麗人は近くにいたアヴェンジャーをゲシゲシ殴っている。ああ、鼻血出して倒れた。それから踏んづけている。 ピクピクと白目を向いて泡を吐く姿に満足したのか、バゼットは清清しすぎる笑顔でこっちに振り返った。僅かに残る返り血が眩しいゼ。 「初めては同性ですか。いい気味ですね」 「やだあああああぁああぁぁぁぁああああああっ、なんで息を荒くして迫ってくるの!? 私たち友達でしょ? ねえ、ねえってば!? その手のワキワキ感はなんですかぁああああ!?」 カレンが傷口を切開してしまったせいで転がりまくるバゼット。あちこちに体をぶつけているけど気にしていない。ショックで脳内麻薬が大量放出中なのだろう。 「いい仕事をしました」 きらーん、とカレンの汗が光った。 「・・・・そのうち刺されるぞ」 「ええ、ぶっといので挿されましたけど」 「なんで下ネタに走りたがるんだよ。親父かアンタは・・・・カレンのせいで相談役の二人が再起不能になったじゃないか」 ゴミのように転がる二人に目を向けて、俺はため息を吐いた。 「安心してください。縁切りの魔女と呼ばわれた不肖カレン、あなたの力となってみせましょう」 「余計不安になったんだけど」 「いいですか、あの少女は大人の階段上る君はまだ○4歳さなんです。青い果実は熟れる直前が美味しいのです。腐ってからでは遅すぎます。それでは虎柄です」 「・・・・なんか藤村邸の方で凄いことがおきそうな台詞だな」 「いいですか、今から言う作戦を決行すれば成功間違いありません。どこぞの初号機のO9システムに迫る成功率です」 「もの凄く成功しない気がするんだけど」 「兎に角、耳を貸してください」 ちょいちょい、と手招きに従って耳を貸す。 「ふー」 「舐めとんのかてめぇはああああああああああああああ!?」 吹きかけられた息。 ぎゃーす、と俺は今日何度目かも分からない叫び声を上げた。 >>>>>>>>>>>>>>>> そんなこんなで作戦決行当日。 イリヤを衛宮邸に呼び出して告白することにした。手にはイリヤへのプレゼント。これで幼いハートもチェケラっ、らしい(?) 「シロウ? 大事な話ってなに?」 バーサーカーに乗って現れたイリヤ。俺は見上げる形になって、プレゼントを渡した。 「イリヤ、愛してる」 「やっちゃって、バーサーカー」 「■■■■ーーーーッ!!」 「ぎゃー」 >>>>>>>>>>>>>> 「カレン、士郎に何を渡したのですか?」 「ランドセルです」 「ひひひ! しかもヒョウ柄だぜえ!!」 「・・・・それはまた、アレですね」 その後、帰宅してきたみんなに踏まれてから、士郎は目を覚ましましたとさ。 おわり
by 津軽カモメ
肝心のイリヤが最後にしか出てきませんでしたが、イリヤ応援SSです。 幼属性の強敵(例の双子姉妹)が現れて少し心配。 イリヤ頑張れ!
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