赫く染まっていた。空も。大地も。 大地を焦がす業火と、それを映したかのような夕焼け。 それに向う影が二つ。 一人は地面に座り込んだ子供。 一人は緋色の外套をまとった浅黒い肌の男。 子供の瞳には、夕焼けを背景に、業火の中から突き出されている母親の腕しか映らず、 男の瞳には、炎を背景に、座り込んだ子供の姿が映っていた。 『これしか、なかった。……はずだ』 世界の破滅を望んだ“共同体（コミュニティ）”の“焼滅”。 もとより話し合いの通じる相手では無い。災厄を未然に防ぎ、後顧の憂いを断つ。 理に適っている。 『なのに。この瞳（め）に映る光景は。まるで』 ―――後顧の憂いを断つならば、“子供（これ）”も“消す”べきだ。 無情の論理が告げる。 ―――このまま放っておいても、助かるまい。 わずかに自由になる感情で押さえ込む。 ふと空を、いや、その先を見つめる。紺碧と白銀をまとった誇り高き騎士の少女。 王として戦野を駆け抜けた少女。彼女は戦いの果てに何を得たのだろうか。 彼女は今の自分を見て何と言うだろうか――― ―――今更、手を下すのをためらうのか。お前を慕う“彼女”よりも、見知らぬ“大勢”を選んだお前が。 己の過去が呪詛となって身体を操り、呆然と座り込む子供の後姿に己の右手をかざす。 『これが俺の望んだ“正義の味方（ちから）”なのか』 ―――投影（トレース）… 遠雷。 詠唱が止まる。湿り気を帯びた風に嵐の到来を知る。 それは全てを消し去り、すべては“無かった事”となるだろう。 『そうか。ならば。すべて』 『無かった事にしてしまえ』 “抑止の守護者”、災厄を未然に防いだ緋色の“英雄”は、 狂った哄笑を残して紅蓮の地獄から消え去った。 胸の奥に芽生えた、一つの歪んだ希望を抱いて。

by 藤村狼牙

ＴＳＵＮＡＭＩさんの歌う「ＨＥＲＯ」と言う曲があります。
とあるＯＶＡのエンディングテーマ……と言うよりも、
シングルＣＤ「カレって時々ブ○」のC/W曲と言ったほうが
通じるかもしれません。

戦いのもたらす惨禍に心を痛めながらも、一人孤独に
戦い続ける英雄（ヒーロー）を歌った曲で、
元々気に入ってはいたのですが、ＵＢＷを読んだ後では、
アーチャーのテーマとしか思えなくなりました。
アーチャーのファンには、機会があったらぜひ聴いて欲しい
一曲です。

とはいえ、ここに歌詞を書くことは出来ませんし、
芸の無い事なので、
二番の歌詞を元に私なりの解釈でＳＳを書いてみました。

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