酒宴の
一日目〜The first day〜 惨劇開始まであと27時間 年も暮れ、赤いあいつがプレゼントを配り始めたころ、あのイベントが催される時期が来た。いや、来てしまった・・・・。 「士郎ー?、しーろーうー?」 遠くで虎の咆哮が聞こえる。どうやら俺を探しているみたいだ。思えばこのときから、いやな予感はしていた――。 「士郎、みーッけ!」 「なんだよ藤ねぇ、晩飯はもうちょっと先だぞ。」 俺は台所で白菜をザク切りにしながら、今日の鍋は牡蠣鍋だから、ポン酢だけじゃなくてレモン汁も用意しなきゃな――なんてことをのんびりと考えていた。 「え?牡蠣?やったー・・・ってそうじゃないのよ!!」 「何だ藤ねぇ、牡蠣鍋食べないのか?」 「違うわよー、士郎のイジワルー」 腹を空かせた虎をこれ以上刺激するのは危険だ。俺は素直に用件を聞いてやることにした。 「で、なんなんだ藤ねぇ?」 「えっとね、明日零ちゃんたちと忘年会することになっててね・・・」 突然は突然だが、前日に言ってくれるのは助かった。たちということはおそらくネコさんも参加するんだろう。 「そうか、じゃあ明日は藤ねぇは外で食べてくるんだな。」 「そのつもり――だったのよ」 「だった?」 いやな予感がした、この大虎が外で飲んでくる分にはまあ構わない。手間と言ったら迎えに行かなければいけない事ぐらいだ。 「その・・・予約するの忘れてて・・・」 「は?」 つい間抜けな声を出してしまった、まだよく事態が把握できていない。 「お店を予約するのを私が忘れちゃってたのよぅ・・・」 しゅんとなるタイガー。 「つまり?」 いやな予感がしていた。 「つまりー、士郎ん家で宴会やっていい?」 は――――。 一瞬、あまりのことに脳の回転が止まった。ようするに藤ねぇは自分が店を予約するのを忘れていたからうちで忘年会をやろうと言い出したのだ。 「だめ?」 可愛いふりをするタイガー。 もうちょっと考えてみよう。 タイガーうちで大虎になる→大暴れ 零観さんやネコさんにセイバーや遠坂のことを知られる→大迷惑 家にいる面子も酒を飲む→予測不能 恐い、正直いって恐い、どうなるかわからない・・・・。 かといって無下に断るのもかわいそうだ、俺は――― 1.「しょうがないな藤ねぇ。」 2.「ダメだダメだ、もう中止にしちゃえば?」 1 本能的に1を選んでしまった。2を選ぶとなんか異世界の道場へ直行してしまうような気がしたからだ。 「しょうがないな藤ねぇ、うちの居間でよかったら使ってもいいぜ。」 「ありがとうー士郎!!」 眼を輝かせるタイガー。まあ感謝されるのも悪くない。学校では藤村先生にお世話になってるし。 「料理とかはどうするんだ?注文してるのか?」 「何言ってんの、士郎が作るんじゃない」 何言ってんの――。 また脳の回転を止められた。俺はそこまでしなきゃいけないのか?食費は? いっそのこと金取ってやろうか。 「わかってるわよぅ、おねぇちゃんだってそこまで鈍感じゃないわよ。はいこれ」 藤ねぇがポチ袋を渡してきた。 「それ使って材料買ってね。あ、お釣りは返さなくていいわよ」 藤ねぇにしては気が利いている。中身は―――お、1万円も入ってる。 「いいのか藤ねぇ?こんなに貰っちまって――」 「いいのいいの、それ新年の分のお年玉も兼ねてるから」 平然と言い放つタイガー。 これがいい大人のやることでしょうか・・・・? 1万円じゃどう切り詰めてもトントンだ。いやむしろ足が出る。 つまり俺のお年玉はマイナス何千円ということになるのだ。 これはもういじめではないでしょうか? イジメかっこ悪い 「よーろしーくねー♪」 虎が吼えながら去っていく、俺はしばらく唖然としていた。 2日目〜The second day〜 惨劇開始まであと6時間 「悪いな桜、買い物手伝ってもらって」 「いいんです。先輩とお買い物するの楽しいですから。」 いい子だ、桜はいい子だっ。そんなことを考えながら買い物をすませた。 惨劇開始まであと2時間 ぐつぐつぐつ、とんとんとんとん、ジュ―! 調理の音と言うのはどうしてこう、おいしいものを連想させるのだろう―― 桜の揚げているチーズとんかつも美味そうだ。俺もがんばらないと。 そんなことを考えながら料理していると――― 我が家に生息するもう一匹の野生動物がやってきた。 「シロウ、ご苦労様です。」 「おっ、セイバー。今日は忘年会だからな。お酒は大丈夫か?」 からかい気味に聞いてみた。 「はい、問題ありません。ボウネンカイというのは初めてですが楽しみです。」 「そうか、でも料理が出来上がるのはまだまだ先だから、むこうでテレビでも見ててくれ。」 「はい。わかりました、シロウ」 正直、三人もいると家の台所でも手狭だ。セイバーには悪いけど向こうに行ってもらえて助かった。 ―――まだセイバーがいた。 なぜが視線を右へ左へ。 「どうしたんだ、セイバー?」 「あ、あのですね。味見は必要ありませんか?」 は?味見?そうかそういうことか。 「そうだなじゃあこれとこれの感想を後できかせてくれ」 俺は取り皿にから揚げとポテトサラダと載せてセイバーに渡した。このから揚げは香りつけのためにバーブを混ぜた衣で揚げた特製の一品で、ポテトサラダは単に作りすぎたからという理由だ。 「ありがとう、シロウ。では――」 もし尻尾があったらはちきれんばかりに振っていただろう。セイバーは嬉々としながら台所から出て行った。 さて、これからが大変だ。なんたって参加人数が多いからな。あの後、藤ねぇのおかげで参加メンバーが増えに増えて、一気に大忘年会になってしまった。 さて、もうひとがんばりだ。 惨劇開始まであと―― 『かんぱーい!!!』 威勢のいい声が上がり、惨劇の幕が上がる。 この結末を知るものは誰も――――。 続くかも
by じろろう
忘年会は記憶が飛ぶまで飲まないとね☆
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