衛宮邸での賑やかな夕食。 　当たり前のように繰り返された、暖かな光景。 　いつまでも続く筈だったソレが、終わりを迎える時が来たことを彼女は知った。 　夕食を終え皆が自室に戻った後、彼女は窓から外を眺めていた。 　やがて暗闇の中、現れた一つの影が庭を横切っていく。 　影は門へと向かい、そのまま衛宮邸を出て行った。 「――そう、行くのね、士郎」 　そう呟き、凛は傍らにかけてあったコートに手を伸ばした。 　準備はとうにできている。 　このときに備えて、遠坂邸からはありったけの宝石を持ってきてある。 　決戦の場所の下見も済んでいる。 　あとは戦場へと赴くだけ。 　一度だけ部屋の中を振り返り、彼女は窓から闇の中へとその身を投じた。 　彼はこの偽りの楽園を壊し、前へ進むことを選んだ。 　たとえ、そこに大切な人との別れが待っていても。 　彼は追い続ける。 　誰もが夢見た理想を。 　ただひたすらに、あの夕焼けの校庭で跳び続けたように。 「そうよ、士郎。貴方は前だけを見ていればいい」 　後ろを振り返る必要はない。 　そんなのはアンタには似合わない。 　きっとあの誇り高い、剣の少女も同じ思いだろう。 　彼女もまた己の戦場へと向かっている筈だ。 　自分では彼女には勝てないかもしれない。 　けれど、 「貴方が走り続けるというのなら、その背中は私が――」 　守ってみせる。 　これだけは自分にしか出来ない。衛宮士郎の世話を焼くのは、遠坂凛の仕事だ。 　右フックの借りなど関係ない。 　遠坂凛もまた、自分の道を貫き通す。 　そうして彼女は走る。 　自分の戦場へ。 　 　ユメの終わりが、近づいていた。

by 桂

ホロウではあまり見られなかった彼女の凛々しさ。
それが少しだけ残念でした。
その分日常パートでは十二分に楽しませてもらいましたが。
というわけでこのようなSSと相成りました。

新キャラも魅力的で大いに補完されたキャラたちもいて、凛も大変そうですが、投票の結果がどうなるのか、とても楽しみです。

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