静まり返った山門。 長い階段の先。月を背にした山門の守り手に青い騎士は声を掛ける。 「･･･相変わらず暇な野郎だな。そんなんじゃご自慢の長刀が泣くぜ？」 「ふっ、それはお主とて同じことだろう。だがまぁ、このまま腕を揮う機会がないというのも些か味気ないのも確か」 どうだ、一戦交えるか？っとアサシンは声には出さず表情で聴く。 だがランサーはそれには乗らず、 「なに、今日はテメエと一戦やろうってわけじゃねぇ。ほれ」 そう言って持っていた包みを投げ渡した。 訝しげな顔をするアサシンにランサーは言った。 「さっき釣れたばかりのやつをちょっとな。刺身は鮮度が大事なんだろ？早めに食っちまったほうがいいぜ」 思いがけないランサーからの差し入れに流石のアサシンも虚を付かれた。 「これはこれは。真逆お主からこのような貰い物をするとは思わなんだ。いったいどういう風の吹き回しだ？」 「なぁに、お互い苦労する主を持っちまった身同士。たまにゃこういうのも良いかと思っただけだ」 くっ、とアサシンは涼しげに笑いランサーを見る。 「礼を言おう。今宵はこれを杯に月を眺めるのもまた一興。どれ、次の機会があれば互いのマスターの愚痴でも語り合うかランサーよ」 それも悪くねぇなとランサーはニヤっと笑う。 互いの主への愚痴をここで語るというのもたまにはいいかもしれない。 「ま、次の機会があればな。そんときゃちゃんと酒も持ってきてやるよ」 じゃあな。っと山門を後にしようとするランサー。 だがその背中に不意に声が掛けられる。 「あれ？もう帰るんですか？その話、ボクも混ぜてくださいよ」 ランサーが振り向くと、いつの間に現れたのか金髪の少年がランサーの後ろに立っている。 「む、お主は･･･」 「お久しぶりです。以前はお邪魔してすいませんでした」 半年前。 山門を襲撃したサーヴァントをアサシンは迎え撃った。 しかし黄金のサーヴァントの攻撃はあまりにもアサシンと相性が悪かった。 山門より動けないアサシンに対し、黄金のサーヴァントは湯水のように剣を浴びせかけた。 アサシンはそれを捌きに捌いた。だがそれも長くは続かない。持ちこたえたのはたかだが数十分。長刀は折れ、手足は繋がっているかも不鮮明。その状態のアサシンに剣は容赦なく降り注いだ。 こうして、己が秘剣も披露できぬままアサシンは敗れ去ったのだ。 ･･･ほんの刹那、半年前の出来事が頭をよぎる。 「そうか。あ奴であったか」 「その節は本当にごめんなさい」 「なに、この身がお主に及ばなかっただけのこと。謝ることはない」 アサシンはこともあろうに涼しげに語る。 「だがここにはあまり長居しないほうが良いだろう。私は構わぬがキャスターがお主を見たらヒステリーを起こしかねんからな」 アサシンには破れ去った後のことは分からない。 だがあの後どうなったのかの予想ぐらいはつく。多少なりともこのサーヴァントと手合わせをしたアサシンには、このサーヴァントがキャスターの手にはおえない者だということはわかる。いや、キャスターだけではない。セイバー・ランサー・アーチャー・ライダー・バーサーカーとてこのサーヴァントには敵わないだろう。 結果、キャスターがどうなったのかは考えるまでもない。 ふと月を見上げる。 「ふっ、それを勝ち抜いたか騎士王よ」 アサシンは満足げに呟いた。 「んで、テメエはこんなとこに何の用だ？」 アサシンもその質問にうむと頷く。 「いやー、マスターがボク達のことを探してるから、どこか隠れる良い場所でもないかなっと思ってた矢先に二人が話してるのが目に付きましてねぇ。それでなんとなく立ち聞きしてみたらマスターへの愚痴を語り合うとか合わないとかの話になってたからつい。ここでこの機会を逃したらもうないだろうなぁって」 バビロンより酒を取り出し、ほら、お酒もありますしお話でもして時間つぶしましょうよーとアピールする子ギル。 「ちっ、まぁしょうがねぇか。あんまウロウロして見つかるのは避けてぇしな。テメエはどうだ？」 「キャスターに気取られない限りは異論はない」 「じゃあ決まりですね！いやー小次郎さん聞いてくださいよ。うちのマスターの人使いの荒さときたら･･･」 ･･･このような夜も悪くない。 差し入れの刺身とお酒を口に入れながら今宵もまた平和だと思うのだった。

by ネコネ

小次郎応援SS･･･のつもりです。
色々おかしいとこはありますけど、まぁお祭りだし。って感じで目を瞑ってくれると助かります。あと誤字脱字とかあったらごめんなさい。
願わくば小次郎が10位以内に入ることを祈っております。

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