"Dear my teacher" by さいきつかさ

親愛なる藤村大河先生、突然の手紙をお許しください。
ゲタ箱の中にいきなり手紙なんて、さぞ驚かれたことでしょうね…。
でも、どうしても伝えたいコトがあって、この手紙を書きました。

藤村先生。僕は、あなたのコトが好きです。
一人の女性として、あなたの事を愛しています。

突然、こんなコトを伝えられても戸惑うでしょうか。
この様な差出人の名前も書いていない手紙での告白など、信じられないでしょうか。
けれど、僕は本気で藤村先生の事を愛しています。この気持ちにウソ、偽りはありません。

初めて藤村先生と会ったのは、いつだったでしょうか？
たしか、穂群原学園に入学したその日。遅刻しそうで講堂までの廊下を走っていた時のコト。
僕の横を同じように藤村先生が走っていました。僕よりちょっとだけ前を走っていて、そのくせ
「廊下は走っちゃ駄目よ～？」
なんて楽しそうに笑いながら言っていました。
思えば、あの時にはもう僕の心は藤村先生に惹かれていたんですね。
あの時は「楽しい先生だな」ぐらいにしか考えていなかったけれど。

それからずっと藤村先生を見てきました。
授業中の真剣だけど優しい顔。
お弁当を食べる時の嬉しそうな顔と豪快な食べっぷり。
弓道部で教えている時の武道家としての凛とした姿。
学園に来る前からの弟分だという、衛宮くんをからかっている時の楽しそうな顔。
すべてが素敵でした。
いつも明るい、お日様のような女性。なにも、悩みごとなんて無いと思っていました。

でも、この前見てしまったんです。新都の喫茶店で葛木先生に相談しているところを。
ショックでした。いつも見ていたつもりだったのに、あんな風に悩んでいることなんてちっとも気が付きませんでした。

僕は、藤村先生のことをなんとも思っていない人の考えを語ることは出来ません。
けれど、藤村先生を女性として好きな自分の考えを書くことは出来ます。
自分の、好きという気持ちを伝えることは出来ます。
藤村先生。僕は藤村先生が好きです。藤村先生いわく、「西日本で一番縁が薄い女」である藤村先生のことが好きです。
容姿も、性格も、行動も、言動も全部を愛しています。

今はまだ、僕は何の人生経験も、社会的な能力もありません。
だから、今はまだ僕の名前はここには書きません
ただ、藤村先生のことを愛している人間がここにいることを知っていてください
そして願わくば、この世のどこかで藤村先生を愛している誰かを想っていてください。
いつか僕が社会に出て、藤村先生ではなく藤村大河さんと呼べるその時まで。

僕はずっと、あなたのことを愛しています