"後日談の後日談" by akaosan

・後日談の後日談

―その日、藤村大河はいい気分だった―

同僚の男性教諭に何故か「お礼がしたい」と食事に誘われ楽しいひと時を過ごし別れたあと、いつだったか忘れたがやたらに仲良くなった青い人とちょっと前までお酒を飲んでいたところである（何故かキャンプ）

ほろ酔い気分の夢見心地―まさにお酒が入って最高の気分で踊るような足取りで彼女が帰るべき所に向かっていた。

「うーん、ランサーさんのところ、おつまみって何故かスモークやら干し肉みたいのだけなんだもんなー」

ま、それが良いけどと彼女はひとりごちた。

そのうち和風の家々が並ぶ住宅地に入り込みその中でも目立つほどに大きい藤村という家を―無視してその隣の衛宮という家に入っていった。

「うーんいい香り」

温かな雰囲気のするやたらに靴の多い玄関に入った瞬間に甘いだし汁の香り、今日は鍋か！！と美食家のごとく食いしん坊バンザイな藤村大河はその香りのする中心地に足を進めていった。

「今日はお鍋かコンチクショー！！」

いきなり、ふすまを左右に叩きつけるかのように開いた瞬間に指をバキューンってしてくれた藤村大河、それに向かえの挨拶をいれる十人十色、誰もその行為には突っ込みを入れないの彼女が普段からこの様な行為をしているからであろう。

―どうかと思うけど、とつい最近知り合った赤い少女の弁

「士朗、私の分の用意お願い、あとそれにあうお酒もよろしくー」

はいはいと、髪の毛がオレンジがかった少年―衛宮士朗は苦笑しながらテキパキと用意を進めていく。

「ほら、用意―」「いただきます」

食欲に負けたのかそれとも、意地が汚いのかは解らないが用意がされた瞬間にはもう食べ始めている藤村大河、また苦笑してしまう衛宮士朗。この二人の関係はずっとこの様な感じなのだろう、実に自然だ。

―どうかと思うけど、と昔から衛宮邸通い詰めている紫の少女の弁

「んー、相変わらず良い仕事してますねー、さっき食べたばっかりなのに箸が進む進む！」

親の敵のようにむしゃぶり食う藤村大河、作る側はこんな食べ方をされては張り切らずにはいられない、まさにそんな食べ方だ。さっきまで別のところで食べてたのは置いといてもだ。

―どうかと思うけど、ととある騎士王の弁、人のこと言えないけど

あいも変わらず、もりもりと「この出汁が！」「むぅ、さりげなくここに昆布か！」「おお、まさかこれは鮭児！？」「バターは邪道だ」などとわかってんのか解らないのか良くわからない事をおっしゃる藤村大河、まぁ鮭はタイムセールで2匹で136円という日本産ではない良くわからない国のサーモンなのはやっぱり良くわかってないのだろう。バターは邪道だけど
　
　そのうち、さらなる味付けが欲しかったのか手短にいるスーツを着た女性に

「醤油とってもらえます？」

そう言われた、髪型がショートで濃い紫色の女性は醤油を手に取り

「どうぞ」

そのまま醤油をありえない量を入れてかっ込む藤村大河、そしてポツリと

「ねぇ士郎、ライダーさんは？」

「ん、今日はバイトに残業みたいなのが入って遅くなるってさ」

「ねぇ士郎、この人ダレ？」

「ん、バセット、今日からココにしばらくいることに――」

途切れた言葉、青い顔の衛宮士郎、やっちゃた顔の面々、よくわかってないバセット･フラガ・マクレミッツ、そして―そして笑顔の藤村大河

「ねぇ士郎」

「．．．はい」

蛇に睨まれたカエル、二人の姉に見下ろされる末妹のごとく、動けない衛宮士郎なんかトラウマが出来そうな衛宮士郎。

――そして

「そんな！」

衛宮士郎の背後に回りこむ藤村大河、そして腰に手を回す。

「事が！！」

回りこんだ側の足で踏ん張りながら、反対の足で衛宮士郎の足を払いつつ。

「許されるものかぁー！！！」

そのままブン投げた。

どかんがしゃんとフスマを破ってぶっ飛ぶ衛宮士郎。

「こんな、クールと強い子に見せつつ、自分を追い詰めなきゃ不安で押しつぶされちゃうさみしいウサギみたいなおねーさんキャラを置いておけるかぁぁー！」

叫ぶ藤村大河、実に切迫している

ぱっとバセットを見る藤村大河、バセットは髪が紫色の少女―間桐桜の手をつかみ、手と手を伸ばした。

「どうぞ」

あ、話せそう

「おねぇちゃんは、おねぇちゃんは許さんぞー」

と、伸ばした手と手の間に飛び込み、反動をつけ、「まて、藤ね―」と立ちあがろうとする衛宮士郎の顎に向かって、その勢いを膝に集め飛び込んだ。

鈍い音を立てて庭にぶっ飛ぶ衛宮士郎、「死んだかな」とポツリと赤い悪魔が呟いた。

そこに――

「どうしたの、用事から帰ってきてみたらやたらとにぎやかね」

銀髪、薄い金色（こんじき）の目、色素の薄い、まさに薄幸の佳人という言葉が似合う（外見のみ）修道女が、いろんな意味が含まれたナイスといか言いようがないタイミングで不思議そうな顔をしてたたずんでいた。

「桜ちゃん、この人ダレ？」

もはや動かなくなった衛宮士郎をよそに、ギギギと音を立てて首を回しながら間桐桜に問い詰める藤村大河。

「こ、この人は教会の新任の方でカレンさんです、い、今はまだ教会が改装中で泊まる所がないらしくて、と、泊めてあげようって―」

どもりながらも必死に伝えようとする間桐桜、頑張って、頑張って――

「せ、せ、先輩が！！」

そんでもって何気にぶっちゃけた間桐桜。

周りは、怖いくらいの静寂に満ちた、まぁむしろ怖いんだけど、そりゃまぁ誰だって自分の命は大切さ。

「今度は．．．今度は！、いろんな意味で包容力があって、好きな人の為なら自分が壊れちゃってもいとわないやさしさ、んでもって悪戯がちょっぴり大好きなっていうおちゃめな一面があるお姉さんかこのヤロー！！！」

叫ぶ藤村大河、マジ切迫してる。

ばっとカレンを見る藤村大河、カレンはあさっての方向に指を指す、その方向には、間桐桜と肩を組むバセット。

「どうぞ」

あ、やっぱり話せそう

「おねぇちゃんは許すものかぁー」

肩によじ登り、バセット＆桜の身長と庭から縁側の高さ、藤ねえのジャンプ――落ちる膝、その先は衛宮士郎の鳩尾――ちなみに落ちるときにバク中。

この世のモノとは思えない音と衛宮士郎の嗚咽と姿をみて、みんな死んだと思ってしまう、そんな音がした。

そしてゆっくり立ち上がる藤村大河、今の彼女はまさにタイガー。

「おねぇちゃんのキャラが薄くなるだろー！！！！」

――冬木市に虎の叫びが木霊した

そのあと、バイトから帰ってきたライダーに二人を紹介＆お泊り交渉をしたら、「嫌です士郎、ひどいです」と涙目になって駄々をコネられたのはまた別のお話。