連覇考察
「ひと段落、と・・・」 嵐のような昼飯時から、食器洗い、後片付けを経て到る、衛宮士郎にとっての一時の平穏。 セイバーは昼寝、ライダーは読書、その他は各々外出して、居間に居るのは自分一人。ここ最近、何かとバイトも忙しく、独りになる時間なんてそうそうなかった。お茶でも入れて、のんびりするとしよう。 「第二回人気投票開催中、か。愛されてるよなあ。俺たちって。」 この前、後藤君から聞いた話を思い出す。どうやらネット上で、我々に格付けを行うイベント第二回目が行われているらしい。伝え聞くさまはお祭り騒ぎで大変楽しそうなわけだが、やはり気になるのは順位というところ。自分のではない。気になるのは人様のソレである。 「個人的には」 やっぱり、最愛の人、に一位になってもらいたいと思うのが普通だろう。 俺にとっては・・・ 取りも直さずセイバー、ってことになる。 そうだ、せっかく暇な時間が出来たわけだし、彼女の連覇に向けた傾向と対策を思案してみるとしよう・・・。 そも、連覇というのは難しい。どれだけ自軍に戦力が充溢していようが、敵軍は必ず弱点を研究し、そこを衝いてくるはずだからである。 プロ野球をみればわかる。セリーグ連覇は1992、93年のヤク○ト以来絶えて久しい。今年だって、ロッ○は主力が数名抜けたし、阪○は抜けてこそいないが補強は未知数。敵は必ず、出来た穴、あるいは既存戦力の弱点を衝いてくる。 そう考えると、連覇をなす、という方々は凄まじいばかりの備えをしている、ということになる。朝○龍関の七連覇、某姫君のV4など、一体どういった修練、研究の賜物なのだろう。或いは、端から弱点なんて無いのか? さて、セイバーにとって、補強すべき弱みとはなんだろうか。 考えられることは少ない。とはいえ、不安要素、という意味なら幾つか挙げられる。まずは、黒セイバーの存在である。どうやら、彼女の人気はかなり高いみたいだ。ここに、票割れという事態が予想される。 まあ、ソレをいえば彼の魔法少女だっておんなじか。いや、アレは実に魅惑的だった。猫耳たるものに魅力を感じたのは初めてといっていい。最大のライバルと目される彼女に同じ弱みがある以上、ここを考えるのは無駄なのかもしれない。 二つ目は・・・・やっぱり、体つき、かなあ。どう足掻いたってスタイルという部門では、桜やライダーはおろか、遠坂にだって負けてしまう。うーん。これは大きな課題だ。俺には良く解らないが、世にはグラマーな、巨きいのが良い、という男衆が多いと聞く。しかしなあ。これもまた、短期間ではどうしようもないし。弱点補強はあまり考える意味がないのかも。 となれば、あとは、彼女の魅力をわかり易く満天下にアピールし、それを金城湯池と化していくに限る。昔の人だって言っている。戦が巧い人は誰にも打ち負けないような備えをして、敵に勝てる状態になるのを待つのだ、と。 しかし、一口に魅力といってもなあ。あまりに在りすぎて、どれをピックアップしてよいものなのか。 結っても跡がつかないくらい芯からしなやかな金髪、すらりとした眉にエメラルドグリーンの瞳、整った顔立ち、透き通るくらいの純白の肌、愛すべき健啖さ、騎士としての凛々しさ、少女としての側面、可愛らしい体つきetc・・・。 ・・・ん?俺、今何か矛盾することを考えたような。あ、そうか。彼女の体つきって、決して弱点なんかじゃないのではないか。 そうだよ、あの、成長途上です、っていう様が、男心をくすぐって、思わず守ってあげたくなるのだ。それは、巨きい方が好き、って人にも通用する心かもしれない。そうか、そうだったんだ!無い物を求めるより、逆手に取れ。あえてアピールせん、その可憐な少女らしさを。というか、巨きいセイバーなんてセイバーじゃないし。 「そうか、そこがやっぱりセイバーの魅力なんだよ。」 「ほう。どのあたりなのですシロウ?」 「うん。あの発展途上の小さい胸とか、その辺が・・・」 ん?今なんか、誰か、居なかった?寝ているはずでは、なかったのですか、貴女。 「・・・へえ・・・。そうなのですか。それは今まで気付かなかったですね。」 ああ、まずい。何か、触れてはいけないものに、触れてしまった気が・・・。 「今日は良い天気だ。寝ているのも勿体無いと思っていたところです。絶好の訓練日和ですからね、シロウ。さ、今から道場に行きましょう。今日はお暇なのでしょう?」 「・・・違うんだセイバー、聞いてくれ。話し合えば人類必ず分かり合える。」 「おや、私はサーヴァントですが?まあ、話は道場で聞きましょう。もっとも、話す余裕があれば、の話ですけどね♪」 南無三宝、何ということか。周辺不注意、一生の怪我。迂闊な!とはこのことか。 でも、こんなコンプレックスを感じている彼女も、たまらなく魅力的だなー、なんて。道場という名の煉獄への道すがら、考えたりする平和な午後。どうかどうか、彼女に愛の一票を。そして、こんな幸せな日常が、いつまでも続きますように・・・。
by 永世見習
あくまで、セイバーさんにぞっこんな衛宮君が前提ですので悪しからずご了承を。ともあれ、彼女に頑張って頂きたいものです。少女らしさこそ魅力だ、と思うのは私だけではない・・・はず。
<<PREV<<
>>NEXT>>
一つ戻る
一覧へ戻る