今宵は・・・
「…………」 「……? セラ?」 夜はねないとダメ。でないと、セラにおこられる。 命を削っちゃダメだから。うん。それはいけないこと。 だって、イリヤが守れなくなる。いっしょにいられなくなる。 その夜は、セラがへんだった。 シロウが来てるから? 泊まるから? でも、ケンカはダメ。 イリヤが嫌がる。イリヤが悲しむ。それは、とっても悲しいこと。 だから、いいつけ、少しやぶる。あとで謝ろう。絶対に。 セラ、夜なのにいそがしそう。屋根裏の倉庫にいって、また戻って。 その後、また出かけた。後についていってみる。 …あ、イリヤの部屋の前。 おこってる。くちびる、ぎゅっとかんでいる。 何をみてるの? おこられるけど、ちかづいてみた。 「っ、リーゼリット! な、何をしているのです!」 「セラは? 何、してるの?」 「わ、私は……あ、貴方は、もう活動時間を…」 「うん、ごめんなさい。セラ、何をみてるの?」 「…………」 あれ、返事、ない。どうしたの? セラの見ていたもの、見たくなった。イリヤのお部屋、ちょっとあいてる。 ドアのすきま、のぞいてみた。 あ、イリヤ……あれ? シロウ? ふたり、なかよくねむってる。うん、気持ちよさそう。 「なかよしだね」 「……あの男。少しは礼儀を弁えていると思えば……」 「いいな。あったかそう」 「このような不埒な真似を。これだから、キリツグの眷属はっ!」 「セラ。しー」 「…っ、り、リーゼリット。貴方は、分かって…」 「うん。うらやましい?」 「な、なっ…何を、何をいって!」 「セラ。イリヤ、起きちゃう」 「っ、っ…………」 セラのきもち、ちょっと分かる。 イリヤ、さむそうだった。いつも。ずっと。 …キリツグが、いっちゃってから。ずっと。 したかったけど、できなかったこと。 シロウは、してくれた。それ、うれしい。でも、ちょっと、寂しい。 キリツグのこと、やっぱり、嫌い。許せない。だけど。 シロウは、やっぱり、キリツグの子供なんだね。 「…さぁ、リーゼリット。貴方も休息を。これ以上は許しません」 「うん。分かった」 セラの袖を掴む。引っ張る。 「な、何をしているのです? 私には、まだ仕事が……」 「嘘。セラ、シロウがくると、うそつきになる」 「……そ、そんな、ことは……」 「だから、セラも、寝る」 「…………ええ。分かりました。だからもう、離しなさい」 うん。その言葉は、嘘じゃない。 でも、袖は離さない。だって、今日は――。 「いっしょに、寝よ?」 「………………はぁ?」 寒いお城。寒い夜。 だけど。今日、イリヤはあったかい。 だから、私も。あったかくなりたいと、思う。 「いえ、そんな、りーぜりっ……私は、そんなこと……」 セラは素直じゃないから、強引が必要。 同じベッドで、ぎゅっと抱きついて、おやすみなさいをする。 ぶつぶつ何か言ってたけど。 セラも、腕を回してくれた。 あったかいね。とっても。やっぱり、いいね。 おやすみなさい。イリヤ。 良い夢が、覚めても、続きますように。 [good night]
by 能登耕平
夜ですね。 夢を見られる至福の時間。 まぶたが早くとせかしてます。 それでは、おやすみなさーい。
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