"凛のおねがい" by 高村いなご

「―――ねえ、ちょうだい。あなたの■■、わたしにちょうだい」

潤んだ瞳で凛が切なげにうったえかけている。普段の勝気な姿からかけ離れた様子に息を呑む。

「まだ入れてくれないの？　じらさないで早く入れて。お願い、早く入れて。あなたの■■、わたしに早く入れて」

凛が上目づかいに見上げている。その姿だけでもう心臓がバクバクいっている。

「―――我慢できないの。こんなんじゃ、全然足りない。今のままじゃ、私、ダメになっちゃう。お願い、あなたの熱い■■が欲しくてたまらないの」

だんだんと切羽詰ってきたのか、身体をよじりながら、すがりつくようにうったえかける。

「―――リン。公衆の面前でそのようなことを口にするのはどうかと」
　顔を真っ赤に染めたセイバーが、ためらいがちに声をかけてきた。
「あら、セイバーはもう満足？　もう欲しくないの？」
　振り返りながら、凛はセイバーに妖しげに微笑みかける。
「いえ、満足とかそういうことではなく」
「だって、今回はただでさえカレンとかバゼットとか、新キャラが増えてるのに私なんかルビーとか諸葛とか、票割れしそうなんですからね！　これぐらいアピールしとかなきゃダメなのよ」
　ちっちっちっと指を振りながら説明する凛に、セイバーは赤らめた顔を伏せるように、
「しかし、あれではまるで殿方を誘っているようにしか―――」
「―――って、ちょっと待ってよ！　何で私のセリフが伏字になってるのよ！　これじゃただの色情狂みたいじゃない！　アーチャーも見てないで止めなさいよね！」
　ようやく事態に気がついたのか、凛も真っ赤になって傍らのアーチャーに食ってかかる。
「なんだ。気がついてなかったのか。俺はてっきりわかってやってるのかと思ったぞ」
「そんなはずないじゃない！　ああ、もう！　こんなのが流れたらどうするのよ！」
　一転して青ざめた顔色でうろたえはじめた凛に、よせばいいのにアーチャーが余計なことを言い出す。
「もう遅いと思うが。だが、率直な意見を言わせてもらえば、セリフはいいが君自身に色気が足りないな。そのアンバランスが良いという者も・・・って、よせ！　ガンドはやめろ！」
「うるさい！　バカアーチャー！　死んじゃえ！」
　左腕に魔術刻印を光らせガンドを乱射しだした凛から、アーチャーが逃げる。
「あああ、リン、落ち着いて！」
「これが落ち着いていられますか！　あったまくるー！」
　うがーとほえる凛。どうどう、と機嫌をとるセイバー。
「でもこれで票は集まるでしょうから、機嫌を直して、」
「そんなことでごまかされるかー！　責任者出て来ーい！」
　凛の叫びが闇に溶けていく。