黒王陛下、月下に遊ぶ
彼女が、空を見上げていた。 降り下る月光は彼女を柔らかく照らし、その白い肌にうっすらと青みを差す。 あまりにも淡い星明かりは、彼女のプラチナブロンドの髪を更に美しく見せていた。 彼女が纏う黒い衣服はまるで夜にとけ込むようで、なおその美しさを際だたせて。 儚くも美しい黒い妖精のように見えた。 「……シロウ、どうした?」 いきなり振り向かれて、漏れそうになった悲鳴は必死で呑み込んだ。 「そばに来い。一人で退屈していたところだ」 ……凛の口車に乗って、ライダー&桜がセイバーのくせ毛をいじって早一昼夜。 セイバーの傍若無人ぶりにいい加減士郎もまいってはいた。 だが、少しでも抵抗しようものなら、セイバーは何処であろうとエクスカリバーを抜くのだ。 誰にもソレを止める事は出来なかった。 「あー、うん」 だから軽く頷いて、黒セイバーの隣に立った。 「ふむ。こうして想い人(コイビト)共に見る月も良いものだな」 そう言って、いきなり腕を絡めてくるセイバー。 そのまま、身体を預けてきて、つっと見上げてくる。 先ほどまでの傍若無人ぶりとは裏腹な、可愛らしい仕草と言葉に胸が弾む。 「む……、何か言いたげだな? 構わぬぞ、申してみよ」 少し小首を捻るセイバーに、士郎は苦笑を返して見せた。 「あー、いや、何でもない」 結局、普段も今も、セイバーである事に変わりない事に、気付いただけの事。 同時に、どちらであろうと、己がセイバーを愛している事に変わりはない事を、想い知らされたから。 「……シロウ。私は申してみよと言っている」 だが、そう言って目を細めるセイバーの圧力に、思わず冷や汗をかく。 それでも、直接口にするのはやはり照れくさくて、視線を満月に向けた。 「…………あ〜〜〜〜、その、なんだ…………、やっぱり俺はセイバーの事が好きなんだなって、思ったんだ」 反応があるとは思っていなかった。 傍若無人な王様に脅されて、思わず口にした本音だった。 「あ……」 だから、セイバーの不思議そうな声音に惹かれて、視線を向ける。 そして、絶句した。 「……ふむ。どうなっているのだ、私は」 何処までも平然と、それでも不思議そうな声音で言葉を吐き出すセイバー。 だが、その金色の瞳から。 ぽろり。 ぽろりと。 涙を零し続けていた。 「……哀しくなどない。……辛くなどない。なのに、なぜ、私は泣いている」 「セイバー」 言葉が上手く出てこない。 ただ士郎に出来る事と言えば、セイバーを抱きしめる事だけだった。 「ふむ……、シロウ。お前のせいだな」 ぽろぽろと涙を流しながら、それでも喜色を声音に浮かべ、セイバーが士郎の背中に手を添えてきた。 「お前のせいだ。責任を取れ」 そう言いながら、目をつむったセイバーがつっと顎を上げる。 もう、士郎に止まる事など出来ない。 だから、そっと口づけを交わす。 触れるだけの優しいキス。 だがソレは、直ぐに情熱的なモノへと変わった。 否、セイバーの方が首にすがりついて、激しいキスを迫ってきたのだ。 その感触に抵抗など出来なかった。 夜空の元で、甘い甘い啼き声をあげるセイバー。 白い裸身を月光に晒し、士郎にすがりついて高い声を上げる。 激しい動き故か、いつの間にか髪はすっかりほどけ、背中を胸を肌を彩る。 その姿を見るだけで呼吸が荒くなる。 身体が熱くなる。 幾度終わりを迎えても更に強く引き込まれ、止まることなく止められることなく何処までも高まっていく。 まるで獣の如く求め合い、飽きることなく貪り合う。 そして、やっと終わりを迎えて。 不意にセイバーが優しく微笑む。 「……ふむ。良かったぞ、シロウ」 いつものセイバーが浮かべるソレと変わらない、優しい微笑みに心が熱くなる。 「あ、ああ」 また、滾りだした情欲に気付いたのだろう、セイバーが目を丸くする。 「む? まだ足りぬか。満足するまでしても良いぞ?」 そう言いながらにやりと笑われて、士郎も苦笑を浮かべた。 「……いや、満足するまでって言われると、終わらなさそうだから、遠慮しとく」 「まぁ、良かろう。ではまずは湯浴みに付き合え。それから閨にまいろう」 一瞬浮かべた困惑に気付かれたのだろう。 セイバーは、さもおかしげに口元を歪める。 「安心しろ、褥をともにしろとまでは言わぬ。お前の腕を枕にして夜を過ごすのも良かろうと思ったまでの事だ」 「あ、ああ、それだったら良いけどさ」 「シロウ、私を運べ。全て任せる」 不意に身体から力を抜いてしなだれかかってくるセイバー。 ソレを軽々と抱き上げて、士郎は風呂場に向かった。 ……翌日。 通常に戻ったセイバーに思い切り叱られ。 凛&桜&ライダーに冷たい視線攻撃を喰らい。 士郎は色々な意味で撃沈されたと言う。 ……終わり(?)
by トクナ一号
黒セイバー応援甘甘SS セイバーは好きです。でも黒セイバーはもっと好きです(ぉ これで、一票でも誰かが黒セイバーに入れてくれる事を願って。 因みに、投票は黒セイバーとランサーに入れました。
<<PREV<<
>>NEXT>>
一つ戻る
一覧へ戻る