後日談ぷらす
「姉さんに相談があるんです」 思い詰めた表情の桜に、正直びびった。 だって初めてだったのだ。 相談なんて。 だって普通の姉妹じゃないし。 この意外に意地っ張りな妹に頼られた事なんて、今まで一度だって無かったんだから。 しかし凛は凛。 内面の動揺は、表面上はおくびにも出さず。 「あら。あなたが私に相談なんて、珍しいじゃない」 にやりと笑ってみせる。いっそ、かまをかけよう。 「士郎の事?」 「そうです!先輩おかしいんです!あっ、あんなのっ」 不覚。あまりの桜の勢いに一歩下がってしまった。 「え?ナニが?」 「私の知ってる先輩じゃないんです。姉さんなら解ってくれますよね?!」 「落ち着いてよ。順を追って話さないと解らないわ」 なんだかお姉さんっぽいなー、私。 「ハゼットさんとカレンさんです」 桜が口にしたのは、衛宮の新しい居候の名前だった。凛は眉を顰める。 「それが?」 連中は苦手だ。出来れば関わりたくない。お陰で最近凛は、衛宮家に近寄っていない。 だから知らなかった。 「あの二人と居る時の先輩、違うんです」 違う? 「士郎が?どう違うのよ」 「まず態度が投げ遣りです」 と桜。 「……連中と話せばそうなるでしょうね。誰でも」 「いえ、そういうのじゃなくて。言葉遣いも荒くて、なんて言うか……黒いんです」 「黒い?」 凛は『悪い士郎』を想像しようとして、 断念した。 あり得ない。想像も出来ない。 が、いつも士郎を見ている桜が言うなら、そうなのだ。 「信じがたいけど、信じる。つまり桜はそれを正したいのね」 「いえ、その」何故か、桜はそこで照れる。「ワイルドな先輩もいいなって」 開眼しました、と桜。 「あっそう」 「でもあの人たちの世界に入り込めなくて」 「へ?」 「置いてけぼりなんです。私、悔しくて」 そっちか。 「ふーん」なんか呆れる。「なら桜も黒くなれば?」 何気なく言ってしまった。言ってから後悔する。無茶だそんなの。 「ごめん、忘れて」 しかし、 「流石姉さんです!」 桜は憑き物が落ちたように笑った。 ──結論から言えば。 「ついてけないわ」 凛は溜め息をつく。 桜の試みはうまくいった。 おかげで、様子を見に覗いた衛宮家は魔境と化してしていた。 黒い人達だらけだった。 会話は怪しいオーラを放っていて、凛は早々に逃げ帰った。 最近はセイバーも黒いらしい。 どうしてこうなったんだろうか。……これじゃ私が仲間はずれだ。 はあ、と肩を落とす凛の背後── 一本のステッキが怪しく光っていた。
by 駄犬上等
アヴェンジャー応援! に見えないけれども。 仲が悪そうで仲が良い姉妹も好きなのです。
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