足の向くまま気の向くまま歩いていた俺は、何時(いつ)の間にかあの埠頭に来ていた。 「げっ、しまった。なぜか来てしまった。」 そう、この埠頭は、 金ぴかがジャ○プを読みつつ、子供たちを引き連れて、 赤い人が近代兵器(『買えば』締めて二十万三千円ナリ)を持ち込んで、 青い人はそこはかと漂う哀愁を背中に負って、 三人の互いの誇りを賭けた、強制的に参戦させられる戦いの場と化して･･･ いなかった。 如何なる理由があるのだろうか 青い人ただ一人のみであった。 しばし俺は我を忘れてしまっていた･･･ 「なぁ･･･、ランサー。」 口から言葉が零れる。 「なんだよ。」 と、棹を握り締めているランサーは気怠そうに反応する。 「ちょっと聞きたいんだが、あいつらは？」 零れた言の葉を紡ぐ。 「俺が知るわけねーだろ。」 「まぁ、それはそうだが･･･」 会話が途切れたところに、ククッとタイミングよく棹が撓う。 「よっと、こりゃあ中々の大物って感じだな。」 棹が折れそうなほど曲がりつつも、魚を疲れさせる為に奮闘する。 「金ぴかも赤い奴いねーし、今日はついてやがる。」 しみじみと独白する。 五分ほど奮闘した後、 「そろそろいい頃合だな。」 その言葉と同時に、棹をヒュッと振り上げる。 釣り上げられた魚がコンクリートの上を跳ねる。 「こりゃあ、石鯛じゃねぇか。」 ※石鯛 全長約五十メートル　釣れるということは結構珍しい こっちを向き、にっと満面の笑みを浮かべ、どーよとばかりに胸を張る。 その姿は、幸せそのものって感じがした。 「すごいな、ランサー。」 釣り上げられた石鯛を間近で見ようとランサーに駆け寄ろうとしたその刹那、 俺とランサーの間を遮るように赤い布が疾(はし)り、 「フィッシュ」 という悪魔の囁きが空に染み入った。 そして、あの言葉がルフランスル。 『 』 『 貴方が幸福そうだったので，つい嗜虐心が刺激されてしまった。 』 『 』 「うわあぁぁぁあああぁぁぁぁぁ(ドップラー効果)」 さらわれてゆくランサー。 あまりの出来事に俺はかたまってしまった。 そしてかたまっている俺を無視して、 主(ぬし)の居なくなった埠頭に入ってくる大人気ない二人組み。 「おや、狗がいないではないか。また勝負しに来たというのに。」 「いやはや、だから貴様は悪趣味だというのだ。」 「なんだと、フェイカーごときにはこのすばらしさが解からんのか。」 　　　 　　　　　・ 　　　 　　　　　・ 　　　 　　　　　・ なんだろう･･･ この眼(まなこ)からとめどなくあふれてくる涙は、 この心から迸る悲しみは、 そのとき俺は悟ったのだった。 天壌無窮の楽園など存在しないことを。 だから、最後にそっと告げよう。 「さらば、ランサー」 「お前の楽園はここには存在しないようだ･･･」 遥か彼方では、金ぴかと赤い人の喧騒とウミネコの鳴き声、 そして青い人の悲鳴が響いていた。 補記 後にカレンは「英霊フィッシャー」という英霊の天敵になったとかならなかったとか 〔了〕

by 弣

BGM【彼と彼女のソネット】

どーも 弣(ゆづか)です。
やっぱりと言うかなんと言うかランサーの釣りのネタが多いですね。
それほど衝撃的というか似合っていたというか大人気ない二人組みが際立っていたというか。
もっと、カレンさんを登場させたかったなぁ･･･

他にもカレンさんと人工天然精霊ルビーの組合せも書きたかったんですが、
『カレイドアメジスト、ここに爆誕っ!!!』
見たいな感じで

あー･･･

僕の文章構成力じゃ書けないよ･･･

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