幸せな新婚○○
「そっ、宗一郎様!?今なんと?」 朝の日差しの中、キャスター事[葛木メディア]は驚きのために目を丸くしていた。 「うむ、学校も長期休みに入るのでな。どこかへ出かけようと思う……」 きゅっとネクタイを締め、彼女の夫である宗一郎はメディアの問いにそう答えた。 「……どうした?具合が悪いのか?」 まだ、宗一郎の言葉で固まっているメディアは宗一郎の言葉にはっと我にかえる。 「いっ、いえ、大丈夫です!元気です!ええ、元気ですとも!!」 ぶんぶんっと手を振って元気である事を必死でアピールするメディア。 先ほどから、おかしな感じである。何故か、慌てているように見えるが……。 「……ならいいが」 スーツの上着を着て、宗一郎は部屋を出ようとする。 「あの、その……宗一郎様。少しよろしいでしょうか?」 少し、伏目がちにメディアが口を開く。 「ふむ、時間がないから手短に頼む」 「はっ、はい。あの〜先ほど海外に出かけるといいましたよね?」 メディアの言葉に宗一郎は無言で頷いた。 それを見て、メディアの耳がしゅんとわずかに下がった。 「あの、あの、それはお一人でですか?」 少しメディアの眉が下がり泣きそうな顔になる。 メディアの頭に過去の映像が思い浮かんだ。 ……また…………置いていかれる。………捨てられる。 『宗一郎様がそんなことするはずない!?』 そうは思うものの、彼女の心には大きな心の傷があった。 それが、彼女の心に大きな不安を生んでいた。 そんな様子の彼女を見て、宗一郎は腕を組み、ふぅむっと唸ってしまった。 「そんなつもりで言ったつもりはない」 「えっ?」 「言葉が足りなかったな。メディア、お前と二人でだ」 「へっ?……え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?????????」 宗一郎の意外な言葉。その言葉にメディアはすっとんきょんな声をあげていた。 「……いやか?」 「いえ!とんでもありません!」 その声を否定と感じた宗一郎の言葉を全力で否定するメディア。 さっきとは、打って変わって瞳をきらきらと輝かせている。 満面の笑み。思考ははるか彼方へとび、だらりと涎を垂らす。 「そうか、喜んでもらえるのならばいい」 宗一郎の言葉にはっと現実に引き戻されたメディア。 袖で涎を拭い、ものすごい笑顔で宗一郎に向きならう。 「あの、何故突然そんなことを?」 「新婚旅行だ」 ど〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!! 新 婚 旅 行!? それは、メディアにとってかなり衝撃的な言葉だった。 宗一郎が誰かに言われてしようと思ったのか分からない。 自分で、新婚旅行に行こうと思ったのかもしれない。 ただ、一つだけいえることはこれがメディアにとってこれが初めての彼と二人だけで過ごせる時間であった。 ぽーっと顔を赤くして、宗一郎を見るメディア。 頭の中では、『新婚旅行』の文字と『二人っきり』の文字がぐ〜るぐ〜る回っている。 夢見心地という言葉がぴったりの状態である。 そんな彼女に彼は、優しくこう言った。 「行き先は、グルジアを予定している。出発は未定だが、近いうちに行こう」 グルジア……。 帰してください それは、遥か遠き彼女の故郷『コルキス』があったとされる場所であった。 帰してください 彼は、彼女の行きたい場所に連れて行く。 帰してください それだけのつもりだった。彼女の望みだから叶えようと……。 帰してください だが、その行為は彼女がもっともやりたかったがやれなかったこと。 帰してください メディアは、顔を伏せ震える声を搾り出し、宗一郎に聞いた。 帰してください 「私は、帰っていいのでしょうか?」 「もちろんだ。私が連れて行く」 帰してください ああ、では私が連れて行こう。 宗一郎の言葉がメディアの心に染みていく。 メディアが顔を上げた。 すると、そこには下唇をかみ締め泣くのをこらえた表情の幼き姫君の顔があった。 「そう……いちろう………さまぁぁ…」 最後の方は、涙が混じっていた。 メディアは、くしゃくしゃに泣き出し、宗一郎の胸に顔をうずめた。 うわ〜んと大粒の涙を流し、号泣し続けるメディア。 そんな彼女に対し、戸惑う宗一郎であったが、 この前、公園で見かけた子供をあやす母親の姿を思い出し、 それに習ってメディアの頭を優しくゆっくりと撫でた。 「えぐっ、うぐぅ、あぐぅ、えっえっあ〜〜〜〜ん!!!」 そんな宗一郎の行動にますます声を上げて泣き出すメディア。 宗一郎は、彼女が落ち着くまでゆっくり優しく彼女の頭をひたすら撫でていたのだった。 メディアの号泣している騒ぎを聞きつけた零観と一成が駆けつけ、もう一騒ぎがあったのだが、それはまた別のお話である♪
by 葵 水雨
理想の葛木夫婦を書いてみました。 これで支援になるのかな?(==; ならなかったらすみませんです。 でも、読んでもらって支援になったのなら幸いです。 幸せに、メディア!(^^
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