刃の返しは―――間に合わない。 振りの速度を優先し、片手で振り抜いたツケが回る。 ならばと上体を反らし、そのまま倒れ込むように回避。 後の展開など読んでいる余裕なんて、ない。 この一撃を避ける事にのみ、全身全霊を以って――― 予測通り、撓る刃が首元を掠める。 切り裂かれた風が、肌を震わす。 右手は、戻って来れる。 だが先の回避で、身体の起こしは間に合わない。 両足が踏み切れれば相手の無防備な顎を直接叩けるが、生憎姿勢が悪すぎる。 こちらが倒れ込むまでの間に、相手は止めとばかりに突きの動作へ。 背中が地に付く。 後頭部は少し浮かせられた。 突きの動作が動き出す。 こちらに出来ることと言えば―――刀身で防 … 「大丈夫ですか、シロウ」 …防御が成功すると踏んでいた思考は、見事なまでに一撃で断ち切られていた。 断末魔の叫び、と言うより声帯を震わす余裕もない。 「ああ、大丈夫―――」 言って、身体を起こす。 脳天に鈍い痛み。 どうやら、気絶の引き金になったのはココへの一撃だったようだ。 手加減はそれなりにしてくれているのだろうが、生身の人間には耐性がついても十分に堪える。 「…今回は、酷く荒削りなように見受けられましたが」 そして恒例の反省タイム。 「かな。普通倒れて回避なんて考えないよ「違います」 こちらが言葉をつなげるより早く、セイバーがシャットアウト。 どうやら、スウェーバックの失敗とは別件でおかんむりらしい。 「飛び退いて倒れたのは、むしろ私は正解だと思います。 　シロウが一秒でも長く無傷で居られれば、それだけ私が助けに行くだけの余裕も増える。 　私が言いたいのは、何故防御に回ったのかと―――」 言って、セイバーは我に返ったように言葉を切る。 …待てよ。 今のは、何処かで聞いたような台詞だった気…が。 「…終わったの、でしたね」 そう、聖杯戦争は既に終わっているのだ。 戦いは勝者を生むことなく、今もこうして日常は回り続けている。 人知を超えたサーヴァントに襲われる可能性が無くなったワケではないが、日常で彼らと戦うことはまず、ない。 「でも、戦いのない世界に俺が留まる事は、ないんじゃないか」 家には魔術師二人とサーヴァントが二人。 それだけでなく、冬木の町には物騒なヤツらがまだまだいる。 …多分、本当に普通な、平穏な日々とはきっと縁が切れてしまったのかもしれない。 それに。 衛宮士郎は、せいぎのみかたになると決めたのだ。 その為には、アイツを超えるくらいの修練が必要だろう。 淡い希望。 ―――本当に、一縷の望みと知っていても―――俺は、全てを救いたいんだから。 アイツがその過程を間違えたのか、それとも俺が間違えたのかは分からない。 でも、今は。 自分が信じた“りそう”へと向かう為に――― 「ええ、そうですね。 　その為に、私は剣として此処に居るのでした」 彼女と、歩いていこうと思う。

by せみみみ

キャスターさんとライダーさん大好きな一ファンです。
前回は既に人気投票が終わっていたので苦渋を飲みましたが、今回はちゃんと間に合いました！
前述した二人の応援SSを書こう！と思いキーボードを叩きましたが、何故か出来たのはセイバーさんのSS。
…セイバーさんも大好きなんです。

こんな駄文に目を通して頂いてありがとうございます<(_ _*)>
またこのような機会があれば宜しくお願いします〜。

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