"　聖骸布" by 照

第5次聖杯戦争から3年………

「はぁ……アンタが決めたんなら今更何言っても考え直すつもりはないんでしょ」
半ば投げやりな感じでしぶしぶ認めるあかいあくま。
3日3晩掛けてでも説得しようと力んでた割りに遠坂の返事は拍子抜けだった。
「でもね、まだ諦めた訳じゃないわ。いつか絶対更正させてやるんだから覚悟しなさい！」
といって怒ったように顔を背ける。

……更正って言われると悪いことしているみたいで気が重いのだが。

「そっか……でも士郎はきっとここに帰ってくるわよね。」

…あんな顔の藤ねえを見るのは何年ぶりだろう…教師でもなく虎でもなく、愁いを帯びた瞳。

「ああ、必ず帰ってくるよ。…ここは俺の家だからな」

意外と一番反対したのは桜だった。泣きながら駄々を捏ねる桜を遠坂が代わりに説得してくれた。

最後の夕食、張り切って大盤振る舞いにしたのはいいが、誰も殆ど喋らないまま夕食は終わった。

「セイバーを泊めるって決めた時もあんな感じだったなぁ…」

後片付けをしながら一人呟いた。あの時との唯一の違いは「おかわり×３」すらも無かった事だ。

そして真夜中、慣れ親しんだ土蔵を片付ける。数年前は壊れたビデオデッキ等だったが、今は壊れたDVDレコーダーや壊れたノートパソコンも転がっている。
機械音痴の遠坂が壊したのを藤ねえが直そうとして止めを刺す…という某破壊神の魔法使いもかくやと言う壊しっぷりだ。

そんな中、3年前と何ら変わりの無い場所、セイバーの召還陣を眺める。
あの時の光景は幾ら変転を重ねようとはっきり思い出す事が出来るだろう…
そしてその光景があれば何があっても大丈夫だと言う自信のような物も沸いてくる。

「それじゃあセイバー、行って来ます…正義の味方になりに。」

翌日、朝早くに家を出る。見送り等は要らない。見送られると帰って来れないような気がするからだ。

中央公園に足を向ける。
あの火災の事を思い出そうとした瞬間足に赤い物体が、巻きついた。
「火ィィィィィイィィィ！！！」
「……………フィッシュ」

そのままズルズルとベンチに引きずられていく…

「あら、おはようございます。こんなところで会うとは奇遇ですね」

「……………………………………………………………」

「どうしました？ご気分でも悪いのですか？…いけませんね、旅立ちの日に。」

ニヤリ、と邪悪な笑みを浮かべる聖職者殿。

「そうだな、奇遇だな、それじゃあ急ぐからまたな」

と背を向けた瞬間赤い布が手に巻きつき向きを変えさせる。

「…なんだよ。」

「…正義の味方になりに行くのですね。」

「ああ、でも何で知ってるんだ？」

「昨日の夜サクラが泣きついてきました。女性を泣かせるなんて…最低ですね。」

またもやニヤリと笑う慈愛に満ち溢れたシスター、ずっと思ってたんだが何かこの人にうらまれてないか？俺。

「桜だけじゃない、みんなにもすまないと思ってる。でも…」

「わかっています、美しい物に憧れるのは人間として普通ですから、その在り方が歪であっても間違いではないでしょう。」

…ドキリとする。これだから教会組は嫌だ……

「今呼び止めたのは他でもありません。……どうぞ」

と言ってあの赤い釣ｇ…布を差し出す法衣姿の少女。

「え？………これって…

「聖骸布です。貴方に必要な物だと思いますが。」

あの赤い男……カレンにもらったなんて聞いてないぞ。

「でも…良いのか？仕事には武器とか無いと危ないんじゃｎ…」

危ないんじゃないか。と言いかけるが最後まで言え無かった。法衣の下にチラチラ見える細めだがしっかりしてる鉄の剣、どうみても黒鍵です、本当にありがとうございました。ちゃんと3本持ってるのもポイントです。

「フフ…守っているだけでは勝てませんから。」

なるほど、これからは影を刺されて動けなかった所に偶然この人が通りかかるんですね。

「そういうことなら有り難く貰っておくよ、ありがとう、カレン。」

あれ？そこ邪悪に笑う所じゃないよ？

………その後士郎は『♪カレンさん黒鍵投擲練習♪』の的になり見覚えのある道場に行くのだった…

BAD　END（？）