"ある雨の日" by 珊瑚

「ん～～～～・・・」
　
　外へ遊びに出かける予定だったのだが、衛宮邸に着くなり雨が降り初め計画は頓挫。
　元の計画が計画なので、家の中で暇をつぶすような準備はされていない。
　結果、昼食後暇を持て余しトラの敷物よろしくゴロゴロとしてるイリヤ。

「んが～～～～～～～～・・・」

そして同じ様にすることが無くゴロゴロとしている・・・親トラ？

「トラって言うなーーーーーーーーー！！」

もとい、藤村大河。御年2X歳。

「で、藤ねえまで何やってんのさ？」

「なによ～～私が休日にゴロゴロしちゃいけないって言うの～～？」

「いやまあ、日頃の疲れとかもあるだろうから構わないけど・・・」

（・・・みっともないと言うか見苦しいと言うか・・・）

確かにイリヤがゴロゴロしている姿に比べれば見るに耐えない部分はあるのかもしれない。
　がしかし、既に衛宮邸休日の風物詩になりつつある気もするので、余りきつく言って機嫌を損なうのもいただけない。

「ね～～何かないのシロウ～～～？」

「あ～～・・・気持ちは分からなくはないが人数が人数だしな～・・・」

居候組みのセイバー、ライダー、通い妻な桜は、雨が降り始める前から出掛けた。
　雨が降り始めたので駅前の大型商業施設でウィンドウショッピング時間を潰しつつ、
　夕飯の支度が出来る時間にまでには帰るとの連絡が。

凛は衛宮邸に顔を出していない。
　士郎とイリヤとの約束の事もあり元より来る予定は無かったので当然である。

「ウチにはトランプ位しかないからな～・・・」

そう言って縁側から未だ雨の降る外へ目を向け・・・軒先に目が向く・・・。

「・・・ふむ・・・」

何かを思いついたのか居間から姿を消す士郎。

「何かあったのかな？」

先程まで士郎が見ていた縁側を覗き込むイリヤ・・・
　しかし、相変わらず雨は降り続いている。

「士郎だからたいした事じゃないと思うわよ～？」

何もしない自分の事は棚に上げて言う藤ねえ。

そして居間に戻ってきた士郎が持ってきたのは・・・。

「・・・布に・・・マジック？」

士郎が持ってきたものを確認するイリヤ。

「ふふ～～ん・・・読めたわよ士郎♪」

「イリヤは『てるてる坊主』って知ってるか？」

「・・・てるてる・・・何？」

はじめて聞く単語に顎に指を当てつつ小首を傾げるイリヤ。

「でも士郎・・・普通前日に作っておくものじゃない？」

「そうなんだけどな～・・・ここまで急に天気が悪くなるとは思ってなかったし・・・」

「こらーーーーーーーーー！！ちゃんと説明しなさーーーーーーーーい！！」

がーー！と両手を掲げ威嚇するイリヤ。

「ああ、ごめん・・・てるてる坊主ってのは・・・」

説明省略（ぉ

「それで雨が止むの？」

再び小首を傾げるイリヤ。

「まあ、おまじない程度・・・降らなけりゃいいなって程度のね。
でも、イリヤが気合入れて作ったら止みそうな気もする」

確かにマジックアイテムになりうるかもしれない・・・。

「ま、どうせする事も無いし～・・・で、如何するの？」

作り方を聞き三人でてるてる坊主を作りはじめる。
　最初に形が出来上がったのは藤ねえ。

「ん～～・・・顔は如何しようかしら？『へのへのもへじ』じゃ味気ないし・・・」

しばらく士郎を顔を見て・・・。

「よし♪」

「・・・おい、藤ねえ・・・」

士郎の嫌な予感的中。

「じゃーーーーん♪てるてる士郎～～～～♪」

デフォルメをきかせつつもしっかりと士郎とわかる顔立ちの『てるてる士郎』が出来上がっていた。

「著作権侵害・・・あと人を軒下に吊るそうってのか？」

「えーーーーー？いいじゃない『てるてる士郎』
普段から色々してくれてるんだからお天気もどうにかしてくれるかな～～～って」

「あ、そんなのもありなんだ・・・じゃ、私は♪」

「あ～～・・・もしもし、イリヤ？」

「じゃじゃーーん♪てるてるバーサーカー♪」

流石イリヤ・・・誰よりも長くバーサーカーと共に居るのは伊達ではない・・・
　確かにそれなら雨も止むだろうと言う様な厳ついてるてる坊主・・・
　もとい『てるてるバーサーカー』

「しかし、サイズが他のと同じじゃ…」

士郎大失言。

「・・・シロウ・・・有るだけの布を用意しなさい」

冷徹に告げるイリヤ。

「すいません、勘弁して下さい」

頭を下げる士郎。
　しかし構わず音も無く立ち上がり有無を言わせぬ口調で告げる。

「シロウ三度は言わないわ、用意しなさい」

「・・・ちょっと待っててくれよ・・・」

地雷処理班なんて居ない、ガンバレ士郎。

「・・・お姉さんとしては負けていられないかな？」

「何？タイガ・・・私に勝つ心算？」

冷笑を浮かべ座ったままの藤ねえを見下すイリヤ。

「ふっ・・・こと勝負となっておめおめ引き下がる藤村大河ではない・・・
デカイだけが強さではない事を教えてやるわーーーー！！」

道場モード（？）なタイガ・・・。

「だからタイガーって言うなーーーーーーーーーー！！！」

そして士郎が持ってきた新たな布によって再開されるてるてる坊主作り。

「ほら、これで文句無いでしょシロウ♪♪」

出来上がったのはイリヤが抱えられるほどの大きさの『てるてるバーサーカー』

「ふっ・・・甘いぞイリヤ・・・
バーサーカーがセイバーに敗れた事がある事は忘却の彼方か・・・
見よ！我が力作『てるてるセイバー＠宝具装備Ver』
ちなみに宝具には『約束された晴天の空』なんて名前も付けてみた」

アホ毛が付いてるのは言うまでも無い基本事項ｗ

「むむっ？！なんかすごーーーっく晴れそうな気がする！」

『てるてるバーサーカー』に強敵現る？

「待て待て待てーーーーーい！！コレを見てからもそんな事が言えるかーーーー？
名づけて『てるてる金ピカさん』」

『・・・ギルガメッシュ・・・？』

士郎とイリヤの声がハモる・・・。

「・・・すっげーー雨が降りそう・・・」

「剣や槍、のちに血の雨が降るでしょう？」

『・・・不吉だ（ね）』

「くわっ？！お姉ちゃん大失態？！
強そうだと思ったけどてるてる坊主には向いていなかったかーーーーーーー！！」

「・・・あの・・・三人で何してたんですか？」

「え・・・あ、桜？」

振り返ると其処には桜と共に戻ったセイバー、ライダーが居た。

「只今戻りましたシロウ・・・で、私も何をしてたのかを聞きたいのですが・・・」

「机の上に大量に有るのは恐らくてるてる坊主ではないかと」

何故その様になったのかまでは理解できないが、
　取りあえず机の上にある物は分かると言った風のライダー。

「ああ、雨で出かけられなくなって、する事が無くてか作ってみたんだけど・・・もうそんな時間か？」

「はい、雨も止みましたから丁度良かったです♪」

「あ、ホントだ」

縁側から外の様子を確認するイリヤ。
　そして、雨が止んでいると言う事実と共に・・・。

「ねーねーシロウ、虹が出てるよーー♪」

言われ縁側に出てみれば見事な虹が見えた。

「この様に美しい虹が見れるならば雨の降る日と言うのも良い物ですねシロウ♪」

隣でご満悦なセイバー。

「ああ、そうだな」

今日と言う一日が良い形で終わり、明日も良い日になれば良いなと思った・・・。

「ところで先輩♪」

「なんだ桜…」

振り返ろうとしたがそれが出来ない・・・
　後ろから感じる”ソレ”は紛れも無く・・・。

「このてるてる坊主・・・私に似てるかな～～～って思うんですけど・・・
それがこんなに黒いのは何でなんでしょうか～～～～♪」

（・・・それがいけないのですよ桜・・・）

そうは思いながらも口に出せないライダー・・・。

「そ、それは作った藤ねえに・・・」

「じゃ、雨も止んだ事だし私は帰るね～～～…」

「あら、藤村先生・・・折角ですから晩御飯を食べて行ってくださいな♪」

「イヤッ！逆に喰われる！絶対に！！」

野生のトラの如き俊敏さで逃げるタイガ、追う桜。

「・・・これがいけなかったのかもしれないな・・・」

「てるてる金ピカ？剣や槍、のちに血の雨・・・？」

「それはそうと知っていますかシロウ、てるてる坊主の起源からすると
晴れたなら目、鼻、口を描き、頭からお酒をかけて川に流すそうですよ？」

「博識だなライダー・・・」

「じゃあ、これ全部川に流しちゃうの？」

もったいないといった感じのイリヤ。

「ん～～～・・・晴れる前に顔書いてるし、すぐに捨てるのも・・・」

「取りあえず今持っているソレは早急に処分する事をお奨めします」

「不人気だなてるてる金ピカ」

そんな事のあったとある雨の日・・・そしてその後・・・。

「ふむ・・・なにがなんなのだろうか・・・」

「ん？如何した氷室？」

「ん？美綴嬢か・・・いや、なに以前森の奥に城が有ると言う話をしたと思うのだが・・・」

「ああ、困難を乗り越えたらメイドがどうのこうののあれか？」

「覚えていてくれたか・・・ああ、その噂に新たな項目が・・・」

「ん？なになに、どんなの♪」

「いや、美綴嬢が楽しめるような程では・・・いやなに、週末に其処に辿り着くと・・・」

「辿り着くと？」

「・・・・・・」

「どうした？」

「・・・てるてる坊主が・・・」

「てるてる坊主？」

「城がてるてる坊主で飾り付けられているらしい・・・それも数え切れないほどの・・・」

「・・・ある意味オカルトだな・・・」

おわれ