いらっしゃいませ、アーネンエルベにようこそ! 店員の日比乃ひびきです。
本日は皆さんにお店のご紹介をしたいと思います!
さてさて、都会の隠れ家を目指してひっそりとオープンしたこのお店。
控えめな照明とアンティーク調に統一された店内には、とても落ち着いた雰囲気が…ややや、そこにいるのは同じくアルバイトの桂木千鍵ちゃんじゃありませんか!
…あー、どうも、桂木です。
ほいほいチカちゃん、アーネンエルベでのお仕事はどんな感じですか?
女子高生らしいアルバイトライフをエンジョイしてますか?
あー、そうですねー、
とてもやりがいのあるたのしいしごとだとおもってます。
(駄目駄目チカちゃんっ…もっとスマイルっ…スマイルっ…!)
──ぃぃやってられっかあぁーーーッッ!!!
(ドンガラガッシャン!)
ああっチカちゃんご乱心、ご乱心です!
もう待避する暇もありません! 今右手をカメラにかけました! ものすごい力! さようならみなさん、さようならぁー…
ひ、人を怪獣扱いすんなー!
大体こんなPRビデオなんか作ったって客増えるわけないじゃんか!
全然隠れ家になってないし、隠れに来てるお客さんが寄り付かなくなるだけじゃん!
そんな事ないよ? チカちゃんに会う為にお店に通ってくれてる人もいるんだし、チカちゃんの魅力を前面に押し出せば、きっと常連のお客さんだって喜んでくれるよ。
人の事アンドレとかカンドレとか呼ぶ奴らに喜ばれても私は嬉しくない。
あ、それ最近よく聞くよね。でも何か違う気がするんだけど…。
(RRRRR…)
やや、どこからともなく携帯電話の着信音。
(RRRRR…)
見つけた、植木鉢の陰!!
…日に日に隠し場所が凝ってくるなコイツ。ひびき、トンカチか凍ったブロック肉持ってきて。
(ピッ)
『ストーーーップ! アンドゴーーー! いややっぱりストップ! それを壊してしまうなんてとんでもないッ!!』
あーのーさー。なんでいっつもいっつも触ってもないのに喋りだすかなー。
こんにちはケータイさん、今日も器用だね。やっぱりケータイさんもチカちゃんに会いに来たの?
『いや緑はどうでもいい。君に会いに来たのさハニー』
液晶かち割るぞこら。あのさ、そろそろ何の目的でこんな事やってんのか白状してくんないかな。やっぱあれか? ストーカーってやつか?
『ス、ストーカーとか言わないでよねっ! 中の人なんているわけないんだからっ! ワタシはそう…貴女だけにしか見えない携帯電話の精パケシ。コンゴトモヨロシク』
いやな名前だなー、おい。
えー、皆さんご注目ください。誰にも気付かれないように店内に置かれ、番号非通知で電話がかかってくるこの謎の携帯電話の「ケータイさん」。
正体はストーカーか、霊界からのテレフォンコールか、はたまたどこかの魔術師が酔狂で作った魔法アイテムか? 謎は深まるばかりであります!!
大体、トリックなんてもうわかってるっての。どーせ客の振りして入ってきて携帯隠して、あとはオート着信機能とかそういうの使って…って噛むな! ちがう挟むな! ああっうっとおしい!
…ほーんと、どんな仕掛けになってるんだろうね。
こんなの、どっかから、リモコンで、動かしてん、だっ!
『愛ですぅー!! 愛が起こした奇跡なんですぅー!!』